連載 スーパーマーケットの2020 #8 オーケー

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絶大な顧客の支持、その理由は

 ただ、オーケーが標榜するのは「消費者第一主義」であり、「ただ安い」だけではない。

 それを象徴するのが、オーケーの店内の至るところに配置されている「オネストカード」だ。

 「オネスト」とは直訳すると「正直」という意味。たとえば、青果売場ではこんなカードが商品に添えられている。「キュウリについて」と題し、「大雨と曇天の影響で、生育不足や各産地の生育遅れが発生しており、入荷量は例年の2割減、価格は5割高と高騰しています。代わりにカットサラダのご利用をおすすめします」と記されている。オネストカードでネガティブな情報を包み隠さずお客に伝えることで、買物する際の判断材料としてもらうという意図だ。

 競合店対抗値下げもその1つ。オーケーは「万一、競合店よりも高い商品がございましたら、お知らせください。値下げします」という記したサインを売場の随所に掲げている。競合店の売価を調査し、自店の価格が競合店の目玉商品や特売商品よりも高かった場合は、「競合店に対抗値下げしました」というPOPを添え、価格を引き下げている。

 こうした取り組みを創業当時から愚直に実践していることもあって、顧客からの支持は厚い。日本生産性本部サービス産業生産性協議会が実施する「JCSI (日本版顧客満足度指数)」の2020年度第1回調査においては、オーケーがスーパーマーケット業種の第1位に輝いている。11年度に調査対象となってから10年連続の1位であり、支持はまさに圧倒的だ。

「借り入れなしで年率20%成長」へ

 かつては安売りをめぐって大手ビールメーカーと主張が食い違い、軋轢を生んだこともあるオーケーだが、食品スーパー業態では珍しい徹底した安売り戦略は、コロナ禍による“巣篭もり特需”の以前から高い成長率を維持している。

 オーケーの20年3月期業績は、売上高(テナント除く)が対前期比10.6%増の4347億円、営業利益は同24.6%増の228億円だった。経常利益率は前期から0.63ポイント増の5.42%、経常総経費率は同0.61%減の16.11%と、経営効率を示す指標でも脅威の数値を叩き出している。

 オーケーでは「借り入れなしで年率20%成長を達成する」という経営目標を掲げている。売上高を見ると、17年度からのわずか3年間で1000億円を積み増していることからもその高い成長性がうかがえる。

 16年には主要株主の1社である三菱商事から迎え入れた二宮涼太郎氏が社長に就任。三菱商事グループとの連携にも期待がかかる。今では少なくなった「正統派チェーンストア」は、この先どのような成長を見せてくれるのだろうか。

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