コメリとJAのタッグが、“世期の協業”と言われる理由
「三方良し」をめざす
コメリにとってもこの協業は大きな意義を持つ。同社は1977年にHC事業に参入、その6年後には「ハード&グリーン(H&G)」というハードウエアと園芸・農業用品に特化した専門店業態を確立した。農業資材は、創業家の生業が農家ということもあり、コメリが以前から注力してきたカテゴリーの1つである。同社は20年3月末時点で全国に1197店舗と11カ所の物流拠点を有している。
「農業資材は約1兆円の市場がある。そのうちコメリのシェアは約800億円。まだまだシェアを拡大する余地はある」とコメリの捧雄一郎社長は話した。
また、捧社長はコメリの強みとして、標準化を基本とするチェーンストア経営の仕組みでいいものを安く提供するローコストオペレーションに取り組んでいることを挙げた。今回、JA上伊那との提携により、標準化しにくい農分野の品揃えが強化できるという。
「この協業でJA上伊那、組合員、コメリの全員がプラスになる『三方良し』をめざす。農業資材は地域によって求められる商材が異なる。これは我々が得意としている標準化とは相反する。地域に根差した商品を持っているJA上伊那さんと協業することで、地域の農業を守り、育てていきたい」(捧社長)。
8店舗を改装 相乗効果も
コメリとJA上伊那の正式な協業が始まったことで、具体的には下記の取り組みが始まった。
まず、JA上伊那は10店舗あった資材店舗のうち、コメリが近くにある7店舗を閉鎖。3店舗と臨時の出張店舗2店舗の合計5店舗体制へと変更になる。
また、8店舗((H&G箕輪店、H&G伊那店、H&G上伊那宮田店、H&G飯島店、H&G辰野店、H&上牧店、H&G駒ケ根福岡店、H&G南箕輪店)の改装に伴い、試験販売していたJA上伊那の専売商品の取扱品目数を拡大した。農薬・肥料・農業資材を中心に、SKU数は試験販売時に約35だったところ、約10倍の300~350に増やした。
販売形式は、JA上伊那によるコメリへの販売委託を採用。JA上伊那がコメリの売場の棚を借りる、いわゆる「ラックジョバー方式」で、レジ精算はコメリの既存商品と共通になっている。「コメリさんは夜間も営業しているため、兼業農家の組合員が仕事の帰りに商品を買うことができる。またJA専売品だけでなく、日用品などコメリさんで販売しているほかの商品もワンストップで買うことができるため、組合員の利便性向上につながる」(御子柴組合長)。JA上伊那は資材店舗を減少させる分、営農指導事業を強化する。
コメリとJA上伊那という異例の提携はまだ始まったばかり。「これは全国に一石を投じる協業になる。必ず成功させて次につなげていきたい」と捧社長は抱負を語った。