日本でCPFRもオムニチャネルもうまくいかないのは“アメリカ礼賛”で形式だけ真似ているから

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

私が本連載で繰り返し主張してきたコンセプトにCPFR(シーファー)がある。今から20年前に日本を席巻したコンセプトである。その頃私は10年の実務経験があったが、CPFRに出会ってカラダの震えがとまらなかったことを思い出す。それほど、CPFR というコンセプトは強力で隙が無い。今でも、私が改革の北極星(向かうべき方向)として、掲げているのはCPFRである。

metamorworks / iStock
metamorworks / iStock

多くの企業が誤解している本当のCPFR

 私は、時々 「CPFR」でをググって、どのような解説をされているのか確認をしているのだが、何を書いてあるのか理解できる文章に出会ったことがない。また、ひどいものになると、CPFRは、デジタルモジュールのパッケージ名であるかの如く表記されているものもあり、手段と目的の逆転が起きているものが多い。 

 CPFR とは、Collaborative Planning Forecasting and Replenishment、つまり、工場、商社、アパレル、小売が「共同」で「MD計画」を立案し、「将来の予測」をリスク分担しながら行って「商品を供給」することだ。システムパッケージの名前などではない。

 もはや日本語になった、SCM (Supply Chain Management) との違いは何か? 詳細は省くが、CPFRに到るまでには「9つの発展段階」があり、SCMはその9つのステップの最も初期的段階の段階を指す。だから、SCMは情報管理を行うだけで、現実に商品在庫リスクを分担したり、商品を生産から店頭に至るまで一気通貫して供給する、あるいは、予測が外れた場合のMD対応までも定義するのがCPFRというわけだ。

 「なんだ、それならどこでもやろうとしていることではないか」と思うかもしれない。だが、CPFRを正しく導入している企業は日本に何社あるだろう。ググれば、某商社やリテーラーの導入事例が記載されているが、CPFRを最も効果的に制御するPLM (Product Lifecycle Management) パッケージ導入さえ、中国に抜かされているのが実態だ。その最大の理由は、CPFRの概念(バリューチェーン全体の最適化とリスク分担)を考えず、個別企業の利益を最大化させる「個別最適化」を目指して改革を行うという、極めて初歩的な「ボタンの掛け違い」をしているからだ。

 くどいようだが、CPFRCPは、Collaborative Planning (工場から商社、アパレル、リテーラーが共同でMD計画を立てること)である。その中の、商社だけ、あるいは、リテーラーだけがCPFRを導入することなどありえない。

 ところが、実態は違う。

 

1 2 3

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態