日本でCPFRもオムニチャネルもうまくいかないのは“アメリカ礼賛”で形式だけを真似ているから

河合 拓
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リスクを押し付けるため、CPFRと真逆の行動を取る日本のアパレル達

 CPFRに至るステップ7とステップ8として、「予測が外れた場合の対応定義を行う」という項目がある。ところが実態として、アパレル企業は、共同どころか「いざとなったら損失ヘッジができるから、商社を通しておけ」と真逆のことを言っている。

 一方、商社は商社で、リテーラーやアパレルビジネスの実態とそのKPI設計について恐ろしいほど無知だ。

 売れない時代にB2Bの売上をあげるためには、「成功している数少ない企業のOEMをやる」か、「筋の良いアパレルに資金、人材、商品、デジタル」の4つを複合的に提供し、インキュベートして「勝ち組」に組み込ませるかの二択しかない。

 当然ながら、前者は、現時点では「ファーストリテイリング」か「良品計画」、あえていうなら「ゴールドウイン」や「ワークマン」など、アスレジャーブームにのって成長している企業ぐらいしか思いつかない。

 しかし、ファーストリテイリングと良品計画は三菱商事が、ゴールドウインとワークマンは三井物産が、しっかりと「おいしいところ」を握っている。この領域に参入しようとすれば、血みどろの戦い、つまりレッドオーシャンと呼ばれるコスト競争に陥ることはMBAの教科書を読めばすぐに分かる。

 だが、伊藤忠商事のように効果的にM&A(合併・買収)と随伴トレードを絡め事業収益を維持しているケースを除き、ほとんどは後者に参入せず、未だに青い鳥を求めてさまよって業績を悪化させている。残念ながら、あれだけ日本を熱狂させたCPFRという言葉を誰もが忘れてしまっているのだ。

  CPFRとは、「単にナショナルブランドのMD計画を共同で行い、売れる商品はデータ連係して自動補充させる」ことだという単純な誤解が蔓延している。CPFR開発に大きく尽力し、米国流通業界において最高峰のコンサルティングファームと認知されているカート・サーモンの日本法人でトップをやっていた時代、本件についての討議を米国と幾度もやった経験から言わせてもらえば、CPFRのコンセプトの本質は「全体最適」であり、「リスクと利益の平等配分」である。

  また、コンビニやGMSなどの日用品であればサプライ方向の最適化、アパレルのようなボラティリティ(売れる商品の不確実性)が高い商品であれば、デマンド方向の最適化というように、CPFRは柔軟性を持ったものである。また、ユニクロと東レによるヒートテックの共同開発と同様、日本の熱中症対策として、アパレルと素材メーカーが機能要件を共同開発しながら「マイナス5度」を目標に、帽子、衣料などの開発および、まがい物排除のための認証マーク戦略も立派なCPFRである。

 

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