セブン&アイの”混迷”からあらためて考えたい「ホールディングスのあり方」
セブン&アイ・ホールディングス(東京都/スティーブン・デイカス社長:以下、セブン&アイ)は、カナダのコンビニエンスストア(CVS)大手による買収提案を受け、社長交代、SST(スーパーストア)事業の分離など、経営体制の刷新に迫られた。結果的に買収は撤回されたが、この一連の出来事は、小売業にとって決して他人事ではない。今あらためて、「ホールディングス」という企業形態の大きな変化について考えてみたい。

HDという経営形態に起きた”想定外”の変化
国内トップ小売業の1社であるセブン&アイ。同社に起きたここ数年の出来事は、流通業界のみならず、日本の産業界全体にも大きな衝撃を与えた。マスメディアは連日のように報道し、その多くは当時の経営トップや経営陣、経営体制の資質を問うような批判をするものが多かった。しかし、筆者はそれに対して強い違和感を抱いている。
なぜならば、ここには「ホールディングスという経営形態が、当初考えていたものから変質している」という、産業企業に共通した問題があると考えるからだ。そして、そのきっかけをつくったのは、「アクティビスト(もの言う株主)」という新しい登場人物だ。
セブン&アイとアクティビストの対立は、2005年以降のいわゆる「ライブドア事件」を彷彿とさせるところがある。「企業はいかにあるべきか」を、第三者(ライブドア事件の場合、具体的には村上ファンドや堀江貴文氏)によって投げかけられたことと重なるからだ。セブン&アイの受難をスキャンダラスにとらえ、「他山の石」として傍観している企業は、今後そのしっぺ返しを受けることを覚悟せねばならないと筆者は感じる。
なぜならば、セブン&アイの事例は「業績にバラツキが出てきた事業をホールディングス傘下で維持し続けることに無理が出てきた」という、当初は想定していなかった変化が根底にあるからだ。そしてそれは、「株主」というステークホルダーの数・裾野が増え、企業が多方面からチェックされるようになったという、資本市場・金融市場の変化を抜きには語れない。
また企業が、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)、DEI(多様性・公平性・包括性)など、ポリティカルコレクトネスからの「正義」を強く求められる時代になったことも大きい。





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