セブン&アイの”混迷”からあらためて考えたい「ホールディングスのあり方」

佐々木 泰行(佐々木泰行事務所代表・研究主幹)

果たして「ホールディングス化」は成長戦略の最適解なのか?

 ここで注目すべきなのは、採算性が異なる事業を分離したり、別会社として外部に売却したりすることで、セブン&アイのホールディングスとしての形態が崩れたことだ。これは筆者の想像に過ぎないが、セブン&アイの経営陣はそれを望んでいたわけではなかったように思う。機会を見つけて、収益が芳しくない事業の再生・復活(ターンアラウンド)をすることも視野に入れていたと推測する。しかし、アクティビストによる主張と、それを支持する多くの株主の声に耐えきれなくなった、というのが実際のところだろう。

 つまり、「ホールディングス化」することでより強い企業体をめざしたはずが、傘下の事業の採算、収益性、成長性の方向性がバラつくことで、ホールディングス自体が崩壊した、あるいは”させられた”。それがセブン&アイ事例の最大のインプリケーション※だ。
※ある事柄が別の事柄を暗に含んでいること

 ここで筆者は、日頃から懇意にしているある経営者との会話を思い出す。「どこかとホールディングスを組む気はありませんか」。筆者の問いへの返事はこうだった。「離婚届を出せない結婚をするバカはいないでしょう」。

 そう、複数企業が集まって「ホールディングス化」した場合、各社の株式はホールディングスの株式へと変わるため、収益性や方針が違うからと容易に「別れる」ことはできない。「カーブアウト・スピンオフ」というかたちをとって「引き剥がす」以外に方法はなくなる。さらには、そのことが各社、各事業部に禍根を残す可能性があるということも念頭に置かなければいけない。

 今回のセブン&アイの事例は「ホールディングスのあり方」を問うものだ。そして、企業にとってどういう経営形態が望ましいのかを再考すべきであるという課題を突き付けた。しかし、現時点でそれに即答できる事例はまだ存在していない。

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