セブン&アイの”混迷”からあらためて考えたい「ホールディングスのあり方」
流通業の「HD」 4つの分類パターン
セブン&アイに起きたことの重要さを理解するには、「ホールディングス」とは何かということを改めて理解する必要がある。一般的には、「純粋持株会社型」「事業持株会社型」「金融持株会社型」「事業再編型」などに分類できるが、ここでは流通業に即して、わかりやすいかたちで分類しよう。
大きく以下の4つに分類が可能だ。
①親会社・子会社の資本のねじれ解消のための「ホールディングス化」。具体的には、05年当時、子会社だったセブン-イレブン・ジャパン(東京都/阿久津知洋社長)が親会社だったイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)の時価総額を上回ったことで、資本のねじれの関係を解消するために誕生したセブン&アイなどが例に挙げられる。
②交渉力を持つ十分な規模を確保するため、同じ経営理念を持つ企業が集結した「ホールディングス化」。これにはアークス(北海道/猫宮一久社長・CEO)などが該当する。
③グループで複数の業態・事業を行う子会社を持ち、それを集約してシナジー発揮とグループ強化を図る「ホールディングス化」。これはたとえば、事業持株会社としてのイオン(千葉県/吉田昭夫社長)やバローホールディングス(岐阜県/小池孝幸社長)などが挙げられる。
④同業他社との事業統合を行うための「ホールディングス化」。これは三越伊勢丹ホールディングス(東京都/細谷敏幸社長・CEO)、J.フロントリテイリング(東京都/小野圭一社長)、エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長)などが挙げられる。これらが誕生するきっかけとして、「アクティビスト」の存在が大きかったことも興味深い事実だ。
業界が注目する、ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)が今秋に設立予定の「ブルーゾーンホールディングス」は、企業側の説明などから、③のパターンであると筆者は考えている。
「ホールディングス化」は、小売業界の規模拡大と再編統合に大きく寄与した。また、異なる文化を持つ企業同士の統合により、新たな事業や経営の方向性が誕生した。
さらに、②のパターンにおける同じ地域での集結というのは、往々にして現金商売・回転差資金の存在・ベンダーに対する優位な地位などから”お山の大将”になりがちな小売業が、ホールディングス化によるほかの企業との新しい方向性を模索し変化していったということであり、非常に意義深かったと考える。





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