M&A減税も効果なし!日本のアパレル、中小企業が増え続ける必然の理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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デジタル導入の目的が曖昧な日本企業

Photo by putilich
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 最近では、ユーザー部門のデジタル化を進める目的で、デジタル改革業務を経営戦略室に移管する動きがでてきた。この移管の本来の目的は、既存の業務改善にデジタル化を使うのではなく、業務そのものの本質的な意義を問い、今までにないデジタルカンパニーの絵姿を白紙の紙に描き、その実現のための組織やKPIをゼロベースで設計し、どのようにその絵に近づくのかを考えることである。

 これだけの改革を行おうとすると、時に多くの人的犠牲を伴うこともある。ところが白黒をハッキリさせることが苦手な日本企業では、こうしたときに「グレー」を選択し、業務を知らないシステムチームと自らの業務を守ろうとするユーザ部門の混成チームを、どちらが意思決定をするのか曖昧なまま作りがちだ(そもそも彼らに意思決定する力もないのだが)。また、コンサルタントは業務を理解していないのでデジタル化の絵図を見せられないままプロジェクトがキックオフされる。こうしたプロジェクトの特徴は、プロジェクトのゴールに財務成果を置かないこと、また、導入そのものが目的となっていることだ。生産性を上げるのか売上を上げるのか。システム導入の目的はハッキリしないしそのロジックは曖昧である。

 生産性を上げると言っても、人は暇な時間があれば自分で仕事を作り出すものだから労働生産性は上がらないし、需要予測を行って売上を上げるといっても、アパレル業界の場合そもそも企業の供給量が需要を大きく上回っているわけだから、個社の需要予測を行っても市場は吸収しない(つまり、需要は増えないから売上も上がらない)。すべてがチグハグなのである。当然、生産性を上げたいのであれば、今の人員で売上を(例えば)5倍にするか、今の売上で人員を1/5に削減するかのいずれかである。

 つまり、論理的な解決策を挙げるとなると、以下のようになる。

・B2Bであれば下工程の企業と疎結合し競合の参入を防ぐ。
・B2Cの場合は、まずユニクロと同等の勝負ができるコスパを実現するか、あるいは、ユニクロと比較しても妥当と思われる憧れや満足感を得られるブランド力を持つこととなる。
・あるいは、B2Bであっても、B2Cであっても、M&Aによる事業規模拡大、あるいは多角化は、縮小する市場の中では唯一ともいえる打開策かもしれない。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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