M&A減税も効果なし!日本のアパレル、中小企業が増え続ける必然の理由

河合 拓
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「このシステムはユニクロが導入しています」、「私たちはユニクロの経験があります」。デジタルベンダーが企業から契約を取るために使う殺し文句である。テクノロジーの変化は早く、その裏側まで理解するのは困難だ。だからといって、自社に導入してうまくいくとは限らない。本稿では急速にアパレルビジネスの生き残りが難しくなるなか、生き残るために「デジタル化」をどのように進めるべきか、そして今後起こり得る「M&A」について論じてみたい。

Photo by NanoStockk
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「私は業務をやるから、お前はデジタル改革を専任しろ」は自己矛盾

 経済新聞やコンピュータ雑誌に書かれているAIや量子コンピュータなどの技術に関する解説の多くは学者が書いたものだ。読み物としては面白いが、現場を駆けずり回っている私からすれば、SF小説と変わらない。「将来、AIが働いて、私たち人間を養ってくれる時代が来る」などは、知的好奇心はかき立てられるものの、私や企業が今すべきことは、数十億円、時には数百億円へと積み上がった余剰在庫が端緒となる企業破綻をとめることだ。のん気に数十年後の予想をしている間に、数多くの企業が消えてしまう運命なのだ。ことデジタルに関しては、将来的な可能性と現実の課題との間にはあまりに大きなギャップがある。

 さて、「私は業務をやるから、お前はデジタル改革を専任しろ」というセリフが多くの企業で横行している。一見この考えは合理性があるように見えるかもしれないが、もはや業務はデジタルが人間から奪い自動化される時代である。つまり、業務とデジタルとを分けて検討することは自己矛盾なのである。デジタル化が進めば、その業務そのものが不要となるし、今まで分かれていた組織が統合されることもある。特に、生産領域はその可能性が高い。

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