元アダストリアCFOが手掛ける高級レディースブランド「エレメントルール」急成長の理由
自由な社風の陰で薄れていた「チーム力」

銀行出身で、アダストリアではCFOも務めた金銅氏が、エレメントルールの社長に就任したのは2024年3月。コロナ後にやや停滞気味だったエレメントルールを再び成長軌道に乗せるのがミッションだった。
「コロナ後の“リベンジ消費”の波にも乗り切れておらず、会社としていろんな意味で踊り場のタイミングだった。しかし、課題を一つひとつ整理していけば、必ず伸びるポテンシャルはあると思っていた」(金剛氏)
5ブランドの中でも、65店舗のうちの約半数を占める主力ブランドが「バンヤードストーム」。企画チームを刷新し、2024年春夏シーズンから大幅なリブランディングを図った。
もう一つ、金銅氏が注力したのが「チーム力」の強化だ。
それぞれのブランドが自由に独自の路線を追求できるのが、エレメントルールの強み。一方で、「『自分は自分』と、淡々と仕事している印象が強く、チームとしての結束力が弱いと感じた」と金銅氏は指摘する。
そのチーム力の脆さを象徴する例が、当時存在した「WEB事業部」だ。各ブランドの営業部から独立してECなどのウェブ施策を担っていたため、リアル店舗を所管する各ブランド営業部との間に溝が生まれ、ECのセールの告知を店舗側がしていない、逆に店舗のセールのPOPをEC側が出してくれない、といったコミュニケーションエラーが生じていた。
そこで、WEB事業部を解体し、各ブランド営業部の傘の下にEC担当を組み入れる組織改編を行った。ECとリアル店舗の間の「壁」がなくなったことで、双方が協力し合う関係が生まれた。
また、アダストリアにはショップ店員が個人のスタイリングを自由に投稿できる「スタッフボード」というプラットフォームがある。多くの人気ショップ店員を輩出している人気コンテンツだが、実はエレメントルールの各ショップではスタッフボードの普及が進んでいなかった。金銅氏がショップを訪ねて「どうしてスタッフボードやらないの?」と尋ねてみると、「本当はやりたいのだが、店舗で売上を伸ばすための仕事がどうしても優先されてしまう」との声が多く聞かれたという。
そこで、各ブランドの代表者で構成され、ブランド横断的にデジタルマーケティング施策を推進する「マーケティングチーム」を創設。親会社のアダストリアとも連携をとりながら「SNSに強い会社になろう」と金銅氏自ら社員にスタッフボードの積極活用を呼びかけた。今日では、アダストリア全体で人気ランキングの上位に顔を出すショップ店員も出てくるほど活用が進んだ。
2024年7月には「五感に響く上質を創造する」という企業理念を策定。よくも悪くもバラバラに展開していた5つのブランドが1つの共通言語のもとにまとまり、スクラムが強化されていった。






遠方から1カ月分まとめ買いも ハラル対応スーパー「ボンゴバザール」急成長の理由