元アダストリアCFOが手掛ける高級レディースブランド「エレメントルール」急成長の理由

堀尾大悟

「プロダクトアウト」に振り切った姿勢が熱烈なファンを生む

「5ブランドそれぞれが独自の世界観を打ち出しており、その世界観が支持されている。アパレル業界を見渡しても似たようなブランドがない」

 エレメントルールの各ブランドの強みを、金銅氏はこう語る。

 市場のトレンドや消費者のニーズを分析し、それらに適合したアイテムを提供する「マーケットイン型」に対して、エレメントルールの各ブランドは完全な「プロダクトアウト型」。感度の高いディレクターやデザイナーを登用し、彼らに一定の裁量を与えて自由にブランドづくりを追求させている。

 例えば「カレンソロジー」の場合、ブランドテーマは「旅」。シーズンごとにヨーロッパ、インドなどフィーチャーする国を変えるので、アイテムも都度がらっと一新される。「だからお客さまが飽きることなく、ブランドが長く支持されている」(金銅氏)

カオスのGINZA SIX店
カオスのGINZA SIX店

 「カオス」も、独自のブランディングが際立つブランドの一つだ。

 「GINZA SIX」内にある銀座のショップに入ると、「胎内」をコンセプトに淡いピンクの色調と、所々に丸みのある素材やデザインを取り入れた独特の内観が目を引く。一方、表参道店は白を基調とした落ち着いた空間。店舗ごとにデザインを意図的に変えている。

 「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」など、アダストリアの稼ぎ頭のブランドの場合は、幅広い顧客層の支持を得るためにその時々のトレンドを追いかける必要がある。しかし、エレメントルールの各ブランドはあえてトレンドを追わない。その代わり顧客層は狭くなるが、そのぶんファンの熱量は高まる。シーズンごとに開催するプレス展示会も「店頭に並ぶ前に手に入れたい」と女優やモデル、インフルエンサーが新作のオーダーに来るという。このように、本体のアダストリアができないアプローチに振り切り、コアなファンを生み出せるのがエレメントルールの強みだ。

1 2 3 4

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2025 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態