第115回 「売ったらおしまい」にあらず!モノが売れない時代に改めて考えたいSCの役割
改めて考えたい、SCの役割
ところが、SCなどの商業施設では、販促と言われる活動や接客やポイント付与などプッシュ型の施策を繰り返し、モノを売ろうとする。確かに何かのノベルティに惹かれて買うことや接客トークに導かれ購買行動を取ることもある。しかし、それは客にとって本質的な購買行動ではなく、後々、後悔することにもつながることにもなる。
この前提の下、SCは消費者にとってどんな役割を持つのか。歩合賃料を得るために前年比を追い掛け、テナント売上を上げることだけを目的に短期的な活動を繰り返していないだろうか。
SCは装置産業である。そこにある場所に付加価値が無ければ、単なる売り場の連続であり、当然に短期的な売上に集中する。しかし、10年先も20年先もSCは存在し続ける。
「親に連れられてきた夏のプールイベントに20年後、今度は自分の子供を連れてくる」――。これはSCが原風景の1つであるからこそ取る行動である。
SCは「売ったらおしまい」ではない
今期の売上高目標をクリアするために種々取り組むことも重要である。しかし、この連載で述べたきた通り、SCは装置産業である。売ったその先の顧客の暮らしが豊かにならなければ、消費者は決してリピートしない。人口減少の時代にあって、今、最も重要なのはリピート率である。一部の都市部ではインバウンド需要に沸く施設もあるが、それは特殊事例であり、売り上げ好調と喧伝する百貨店も国内需要はマイナスである。
売ったその先を考え、顧客は何に喚起され消費行動に出たのか。顧客は何を目的に来ているのか、そこを見据えた施策を行わないまま、これまでのMDテナントミックスや販促施策では、ますます「モノが売れなくなった」と言い続けることになるだろう。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
小田原市商業戦略推進アドバイザー、SCアカデミー指導教授、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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