3coinsのパルが初任給30万円に!アパレルが改善したいもう1つの給与制度とは
あの3coins で有名なパルが大卒初任給を25年4月より30万円に引き上げる(改訂前は23万4000円、短大・専門学校卒は29万3000円)と発表した。30 万円といえば同社では年2回支給される賞与を除いても年収360万円となり、25〜29歳の平均給与である389万円(令和4年、国税庁民間給与実態統計調査)とほぼ同じ水準に達する。もうアパレルは給与が低いとはいわせないとも言わんばかりの意思表示である。このアパレル業界の給与問題だが、私は解決しなければならないいくつかの課題があると感じている。一緒に考えてみよう。

働くモチベーションは「お金だけ」なのか
アパレルビジネスは、古くから薄給だといわれ、その給与の低さが語られてきた。本論考でもこの問題をテーマに分析を試みたことがあり、そのときは、「アパレルビジネスはある種特殊な側面をもっており、アパレルがそもそも好きな人間が働いていることが多い」と述べた。アパレル業界を志向する彼ら、彼女らは新しい文化を創造し、この世で「流行りをつくりたい」と考えている。そして、その欲求は時に「お金以上」のものである。だから、お金は多ければ多いほどよいのは当たり前として、仮にアパレルの仕事ができないのであれば、彼ら、彼女らはアパレル業界への就職という道を選ばないだろう。
次に、生涯年収の問題もある。いくら、入社時の給与が他の業界よりも高いとしても、そのあとのカーブが緩やかで、なかなか給与が上がらず、生涯賃金が低いのであれば、たとえ入口の給与が高いとしても、賢明な人は選ばないだろう。したがって、単に入社時の給与が高いだけでは新入社員を呼び込むにはやや心もとない。
最後に、金で企業を選ぶ人は金で企業を去る可能性が高いということもいえる。企業にとってもっとも痛手となるのは、せっかく手塩にかけて育てた新入社員が戦力になったとたんに転職してやめてしまうことだ。今、入社時の給与が高いという理由だけで入社した人は、年収アップのために転職する。アパレルは人材の流出・流入が激しく定着率は他の職種と比較してかなり低い点も挙げられる。
このように、投資のつもりで新入社員を獲得しても逃げられてしまっては、せっかくの投資はうまくゆかない可能性がありリスクも高い。一方で、これらの点を考慮した魅力的な給与システムと帰属意識の高まる各種施策、衰退産業のなかでも自社は成長をし続け、それに合わせて成長できる仕組みがあれば、他社と大きく差をつけることができるだろう。
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