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彷徨うコンビニその1 「横並び」から抜け出せない大手チェーン

日本フランチャイズチェーン協会によると、2019年における全国のコンビニエンスストアの店舗数は対前年比0.2%減の5万5620店、経年比較可能な約15年間で、初めて減少した。原因は、人手不足を主因に大手チェーンが出店抑制に舵を切ったためだ。「24時間営業問題」「廃棄ロス」など課題が山積するコンビニ業界。イオンの岡田元也社長は、「コンビニの問題の本質は、富の再分配のあり方に問題がある」と指摘する。ビジネスの転換点に差しかかるコンビニ。この連載では、コンビニが直面する課題と、それに立ち向かう各社の姿から、「次のコンビニ像」を探ってみたい。

“横並び”のコンビニ業界

「業務が多過ぎだ」

 あるコンビニチェーンの店長は、こう本音を漏らす。

 その名の通り、「便利」を売り物にするコンビニは、これでもかというくらい、物販以外のサービス業務を増やしてきた。公共料金収納代行サービス、宅配便の取次ぎ、EC商品の受け渡し、切手やはがきの販売などと、コンビニで受けられるサービスは増え続けている。一部のサービスは店頭端末で済ませることができるものの、店舗にかかる負荷は増すばかりだ。

 しかし、これを拒む術は加盟店にはほとんどないといっていい。コンビニの基本は「全店一律」。「これをやってください」「これをやれば売上がアップしますよ」という本部から半ば強引に勧められ、加盟店側業務が増やされてきた経緯がある。

 以前、あるコンビニの幹部に「サービスが多いですね。加盟店に負担はかからないのか。絞り込むことはできないのか」と聞いたことがある。すると、その幹部から「無理でしょうね。うちが止めたら、他チェーンに顧客が流れるだけですよ」という答えが返ってきた。「そうか、そんなものか」とその場では納得したが、冷静になって考えると、そうしたスタンスがコンビニチェーンの同質化を招いてきたという気もする。

 そういえば、いわゆる「24時間営業問題」が発生した当初、「24時間を続けなくても構わないのではないか」という会話を大手チェーンの役員とした時も、「深夜に店を閉めると昼間のお客が減るんです。うちが先に(深夜営業を)止めても24時間を続けるライバルに客が流出するだけですよ」との回答があった。つまり、コンビニ業界はつねに“横並び”であり、何か突出して新しい事をやろうとするとライバルに頭を叩かれるというわけだ。

喧騒にかき消されたローソン新浪元社長の言葉

 かつて、ローソン(東京都)の社長であった新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)が、「24時間営業でなくても構わない」と発言し、物議をかもしたことがある。

 業界は突然飛び出したローソンからのアンチテーゼに騒然となったものの、それ以降に24時間営業が真剣に議論されることはなかった。あの“主張がハッキリしている”新浪氏の言葉ですら、業界の喧騒にかき消されてしまった。

 しかし、コンビニ業界はすでに「追い込まれた」と言っていい。業界を苦しめる人手不足問題が解消される見込みはない。次世代型フォーマットや運営の仕組みを早急に構築し、加盟店の負担を軽減していかないと、第二、第三の「加盟店の反乱」が起きかねない

 「無人化」「省人化」など、コンビニ各社は現在、業務の中でも作業負担が大きいとされる決済業務の合理化を進めている。もちろん、これは重要なことであり、一刻も早く仕組みを完成させ、フランチャイズ店舗に導入するべきだろう。

 そして、コンビニチェーンは、これ契機にビジネスモデルを再構築すべきではないだろうか。その中では、増えすぎたサービスを見直すなど、“割り切り”も必要になってくるだろう。おでんやファストフードの販売方法あるいは製造方法の改革など、やることは少なくない。

 今後も、加盟店オーナーの高齢化は進む。その一方で、消費者のニーズは急速に変革している。改革から生まれる「革新」を次のコンビニには期待したいところだ。