第111回 ショッピングセンターの減少と小型化が進む理由とは
24年に閉鎖(など)したSCと全国のSC総数
一方、閉鎖などをしたSCは、38カ所となった(図表2)。この数値は閉鎖・閉店になったものに加え、上記の定義や取り扱い基準から外れる施設も含むため「など」と表現されている。
以上の結果、24年のSC数は、23年の3092カ所から2SC減り、3090カ所となった(図表3)。総数は19年から6年連続で減少している。
開業したSCの面積別の推移
次に開業したSCの面積別推移を見ていきたい。24年の開業SCの平均面積は、1万858㎡とこれまでと比べ大きく減少した(図表4)。その要因として、5万㎡以上のSCの開業が無かったこと、また開業SCの約7割が1万㎡未満だったことが指摘できる(図表5、図表6)。

それでは、出店テナントの構成において、何か変化はあったのだろうか?
SCに出店するテナントの業種別店舗数割合は、近年の少子高齢化を色濃く反映している。24年に開業したSCでは、衣料品10.3%、その他物販25.2%、食物販13.2%、飲食27.5%、サービス23.7%となり、テナント店舗数の半数以上は非物販となっている(図表7)。今後、賃料負担率の低下は避けられないだろう。
減り続けるSC
これらのデータから読み取れる24年のSCの状況は以下のとおりである。
(1)継続的なSCの減少
SC総数の継続的な減少は、
①新規開業の減少
②建て替えや市場環境による閉鎖
③SC以外への不動産用途への転換
などが主な要因だが、今、深刻なのは工事費の高騰である。この影響から新規プロジェクトの見直し、建て替えの取り止め、規模の縮小化などの事例が多く、新規開業の足かせとなっている。
(2)小規模化するSC
工事費の高騰や少子高齢化による市場の縮小を背景に、新規開業SCの平均面積も縮小している。近年、SCの利回りが他の不動産用途に比べ劣後することから、開発の複合化も増加。その結果、「オフィスの足元商業」「下駄履きマンション」などの下層階物件が増加している。
(3)日本のSC
少子高齢化、人口の減少、ECの進展、都市への人口集中、工事費の高騰により、日本全体でのSCの開発余力は低下している。都市部ではインバウンド需要を享受する施設はあるが、購入頻度が高く、日常の生活行動圏内で購入する性質が高い商品を多く取り扱うSCはその恩恵を受けることは少ない。
(4)今後の展望
2000年から続いたSCの好調ぶりは、残念ながら、近年ではその勢いを失っている。むしろ、25年は24年以上に開業数が減少することが予想されている。
今後、SCの「S」、これをショッピングと規定し続けることは難しく、既に24年は飲食とサービスの比率が大きく伸びている。この環境をチャンスと見て、新たなSCモデルを構築することが必要だろう。
取り扱い基準改定の意味するところ
25年1月1日に改定された取り扱い基準による算定では、41カ所が新たにSCとしてカウントされ、上述したSC総数3090カ所は、3131カ所になると発表されている。この改定の意味や目的については本連載107回に詳述しているので参照されたい。
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NO. |
現行 |
改訂後 |
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① |
小売業の店舗面積は、1500㎡ 以上であること |
小売業の店舗面積は、1000㎡ 以上であること |
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② |
キーテナントを除くテナントが10 店舗以上含まれていること |
テナントが10 店舗以上含まれていること |
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③ |
キーテナントがある場合、その面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。 但し、その他テナントのうち小売業の店舗面積が1500㎡以上である場合には、この限りではない。 |
最大店舗の面積がショッピングセンター面積の80%程度を超えないこと。但し、最大店舗の面積を除いた小売業の店舗面積が1000㎡以上である場合には、この限りではない |
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④ |
テナント会(商店会)等があり、広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること |
広告宣伝、共同催事等の共同活動を行っていること |
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
小田原市商業戦略推進アドバイザー、SCアカデミー指導教授、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
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