定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル
当面安泰の百貨店と価格競争が激化するSC
強いアパレル各社の業績が良いと述べたが、都市部の百貨店の調子もまた良い。特に、駅隣接、駅チカなど好立地にある百貨店は軒並み大きな利益を上げている。これは、「インバウンド × 円安パワー」特需であるが、今回の円安は日米金利差が生み出す構造的なもので、米国金利が高止まりの一方で、日本は極限まで下げた金利を上げられずにいることによる膠着状態に陥っている。
ただし日本でもインフレが続いているから、金利を(少しでも)上げざるを得ない局面が来ており、その影響を受ける消費者も増えてくるだろう。たとえば多くの日本人の住宅ローンは変動型で、「1%の金利上昇」が起これば、気付けば金利ばかりはらっており、
このように、日本は円を適切な力を示すポジションに持ち込みたいのだが、それができない事情にあるわけだ。ルイ・ヴィトンなどのスーパーブランドが中国の本店で、
この「インバウンド × 円安」が続く限り、好立地の百貨店は安泰だろう。
逆にSC、ファッションビル、駅ビルなどはシーイン、ディーホリックなどの中韓アパレルとのガチ勝負が待っている。
価格だけで言えば当然、シーイン、ディーホリックの圧勝だ。両者が急激に売上を日本で成長させている要因は、「価格」にあることは自明だが、昨今のSDGsによって、Z世代は「ちょっと高くても良い商品なら長く使おう」という気分になっているように見える。
中・韓アパレルの品質はどんどん上がってきているので、やがて日本のアパレルも苦しくなってくるが、消費者は「定番品はユニクロ、ファッション品は失敗しても構わないシーイン」という「買い方分け」をしはじめた。私は、日本のアパレルがシーインの逆モデルをやって、同じようなコスト構造を構築して売れば良いと思うのだが、日本企業は中々変わらない。これからは「中価格帯を支持する層」をどれだけつなぎ止めていられるかという戦いになるだろう。
いずれにせよ、アパレル産業というのは、人が生きていく限りなくならない。なくならないからこそ、技術が進歩すれば生産性が上がるはずなのだが、どんどん生産地と販売拠点を広げ、この30年さしたる進歩も変化もせず存続している極めてユニークな産業だ。しかし、新しいビジネスモデルをひっさげて次々とニューカマーが現れる。コストももはや限界まで低価格となっている。ポストD2Cの時代では、世界で30%、日本で50%もある余剰在庫の問題を解決することが技術開発の要になるだろう。全てのアパレルが適切な定価をつけ、つくった在庫をすべて売り切ることができれば、まだまだこの産業には明るい未来がまっている。
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プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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