定番はユニクロ、ファッション品はシーイン…どうなる日本のアパレル

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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オムニチャネルからOMO

 私の会社FRI&companyCIOである小山の解説記事によれば、OMOには1)レジがない、2)店頭での接客向上、3)チャネル横断的戦略の一貫性、4)機会損失の減少、という4つのメリットがある。本来、その実装段階では、これら4つに適切なKPIを設定し理論値にどれだけ近づいたのかを計測、その効果測定が必要となる。しかし、多くのケースにおいて、KPIどころか、「オムニチャネルとOMOの違い」もままならず、とりあえず「商品バーコードを読み込めば商品説明を見ることができます!」程度で終わっているケースもある。

 日本でのPLM導入は少数をのぞいて不可能

putilich/istock
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 日本で「PLM(製品ライフサイクル情報をITで一元管理する手法)を導入した」「成功した」という話を聞くが、PLMとは本来「ものづくり」を制御するトータルの組み立てパッケージである。したがって、BOM機能(Bill of materials 、製造部品表)というのだが、一着の製品に使われる原材料までを分解し、それぞれの仕入先へ発注書を出すなど、自動管理しなければならない。ところが、聞いてみると完成品を仕入れて完成品を売る小売(アパレルメーカーではない)に導入し、単なる完成品の製品マスターに使っているだけというケースがほとんどだ。

また、3D CADについては、パターンから完成品のイメージをつくるのだが、逆に商品イメージを変更することからはパターンをつくることはできないのである。これでは、なんのためにデジタルにしたのかわからない。完成品の全体像を見ながら「ここが太い」とか「ここをもっと細く」など、シルエットを描くわけだが、これでは紙と鉛筆とハサミが、マウスとスクリーンに変わっただけで手間は何も変わっていない。シルエットからパターンができないと必用工数は減らないだけでなく、デジタルの恩恵にも預かれない。

 決定的にダメな点は、この3D CADシステムとPLMは「素の状態」では繋がらないため、一つひとつの画像情報をダウンロードし、再度アップロードを繰り返す必要がある点だ。

 また、アパレル企業が独自にPLMをどんどん導入しているのだが、生産の「ハブ」になるはずの商社もまた「動かないPLM」をすでに持っている。この重複ははっきり言って無駄だ。この状況を正す最も良い方法は、商社を使わずにアパレルによる直貿を増やすことに他ならない。こうしたことからも、流通の短縮化は進むのである。

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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