ヤマトがCVCを通じて越境ファッションECに出資するねらい

2024/06/11 05:59
堀尾大悟
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小売・流通業界においても、多くの企業が新たな成長ドライバーとなる新規事業を模索している。しかし、特に大企業は既存のビジネスモデルや成功体験が足かせとなり、新たなイノベーションの種を育てていくことは容易ではない。一方で新興のスタートアップは、大企業にはない機動力とユニークな技術・ビジネスモデルを持っている。

その大企業とスタートアップが手を組み、イノベーションを創出する仕組みとして注目されるのがコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)だ。ヤマトホールディングス(東京都/長尾裕社長)と独立系ベンチャーキャピタル大手のグローバル・ブレイン(東京都/百合本安彦社長)が共同で運営するCVCと、越境ファッションECサイトを運営するスタートアップとの事例から、そのCVCならではのメリットと可能性を見ていきたい。

ヤマトホールディングスのCVCKURONEKO Innovation Fund

ヤマト運輸 イノベーション推進部 アシスタントマネージャーの森山悠華氏

 ヤマトホールディングスでは、2020年よりコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)「KURONEKO Innovation Fund」(以下「KIF」)を運営している。

 CVCとは、大企業を中心とする事業会社が社外のベンチャーに対して行う投資活動のことだ。「STARTUP DB(スタートアップデータベース)」の調査によると、日本国内におけるCVCのスタートアップ投資件数は2017年(118件)から2021年(361件)の5年間で306%成長しており、大企業におけるオープンイノベーションのアプローチとして存在感を増している。

 KIFは、ヤマトホールディングスと独立系VCのグローバル・ブレインとの二人組合形式(資金は自社で供給しつつ、ファンド運営は専門職であるVCに任せる形式)で運営している。

 そのKIFが出資するスタートアップは14社(2024年4月末現在)。「高性能な小型風況観測センサーの開発」「家電お試しサービス」「宇宙空間向け汎用作業ロボットの開発」など、実にバラエティに富んだポートフォリオを組んでいる。中には本業である物流の領域と一見関係性がなさそうものも見受けられるが、ヤマト運輸 イノベーション推進部 アシスタントマネージャーの森山悠華氏は、出資の判断軸について次のように語る。

 「もちろん、本業とのシナジーが期待できるかという観点は重要だが、事業領域にかかわらず中長期的にファイナンシャルリターンが得られるかという純投資目線も持ちながら出資先を決めている」

 このように、既存事業とのしがらみや目先の利益にとらわれずに中長期的な視点で成長が見込める領域に投資できるのがCVCの特徴といえる。KIFも自由度の高い投資判断ができるよう、企業本体からは独立性を保った事業体として運営されている。

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