店内で調理するスーパーの総菜は、できたてを提供できることが強みです。ただしその魅力は、短い販売・消費期限とのトレードオフになっています。できたてが売りのインストア総菜に、時間の壁は越えられない。それが当然と思っていましたが、手段はありました。店内で加工してすぐに冷凍してしまうという方法です。すでに生鮮では珍しくありませんが、総菜に取り入れる発想は、できたての一大転機かも? 4月の取材で目の当たりにした試み、その名も「冷凍dai革命」です。
総菜のライバル、冷食への対抗手段
冷凍dai革命とは、ダイエーが23年9月から近畿圏で始めた取り組みで、デイブレイク社の急速冷凍機を店舗に導入し、生鮮・総菜・ベーカリーのバックヤードで加工した後、冷凍して商品化するというものです。
首都圏では4月に開設したイオンフードスタイル向ヶ丘店(神奈川県川崎市)に初導入しました。冷凍機を設置したイオンフードスタイル鴨居店(横浜市緑区)で製造したものを運び、展開しています。4月時点では近畿6店、首都圏2店で実施中です。
ですから冷凍dai革命そのものは、生鮮・総菜・ベーカリーにまたがる取り組みなのですが、最も印象的だったのは冒頭に触れた理由から総菜商品の冷凍化でした。
冷凍総菜は、すでに日配部門の冷食売場にいくらでもあり、さらに多様化しつつあり、売上を伸ばしています。冷凍総菜こそ、インストア総菜の最大のライバルだと思うほどです。
なにせ冷凍総菜は、インストア総菜と同じ即食系でありながら、ストックも可能です。価格的にインストア総菜より安く済ませることもできれば、当日売り切りのインストア総菜では挑戦できないような高価格帯の商品もあります。
冷凍総菜の方が販売・消費期限が圧倒的に長く、価格帯の幅が広い。廃棄ロスと欠品ロスを同時に回避し、高単価にもチャレンジできる。インストア総菜がこのライバルに優っているのはできたての魅力しかない(決定的な魅力ではありますが)と思っていましたが、できたてを冷凍する発想があるとは、です。
できたて+ストック=需要創造
冷凍dai革命の総菜商品は、かつ丼に天重、唐揚げ、天ぷらなど、通常の温度帯で販売している商品と同じものです。購入者は、買ってすぐ食べたいかストックしたいかの違いで買い分けることになります。または、通常の温度帯で欠品している際も選択肢になるでしょう。
向ヶ丘店のオープン取材の際に西峠泰男社長にお聞きしたところ、冷凍dai革命の1番の売れ筋はベーカリーの「チュロ棒ドーナツ」だそうです。このベーカリーの人気商品は、従来の温度帯では2本入り本体価格130円です。冷凍商品は5本入330円でした。「購入目的が異なるから、冷凍分がプラスオンする」(西峠社長)そうです。欠品防止・機会ロス対策にとどまるものではなく、総菜商品がリーチできなかったストック需要に対応するのです。
かつ丼や唐揚げなどの総菜商品は、昼と夕方のピークに向けて作り込みますが、24時間でみると製造しない時間、つまりバックヤード設備が稼働していない時間がそれなりにあります。これもできたてを売りにする上での必然ですが、そのできたてを冷凍化するなら、従来は空いていた時間に冷凍商品を製造することができます。設備の稼働率を高められること、これも「dai革命」たるゆえんでしょう。
鴨居店と向ヶ丘店の関係のように、母店からサテライト店へ供給することも、設備の稼働率を高めます。しかし冷凍以外の温度帯だと、やはりピーク時に合わせねばならない時間の壁が発生してしまいます。冷凍化することで、サテライト供給の可能性も広がりそうです。
ただ、インストア総菜を冷凍化することで開ける展望も、商品が売れてこそです。西峠社長は、「冷凍総菜のおいしさは技術的に問題ないとしても、見た目の印象はできたてには劣る。商品の良さを伝え、売場を割いた分の販売額を作っていく必要がある」と話されていました。
冷凍dai革命の遂行は、商品の育成や進化がdai前提というわけです。