スーパーの対応待ったなし!オリンピック以降、国内農産物の認証取得が激増する!?

兵藤雄之
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農畜産は、国際的な認証基準のクリアが求められる

 農産物、畜産物、水産物といった食材については、最低限、国際的な認証基準をクリアする必要がある。

 農産物でいえば、「食材の安全の確保」、「周辺環境や生態系と調和のとれた農業生産活動の確保」、「作業者の労働安全の確保」であり、「JGAP」「ASIAGAP」「GLOBALGAP」(いずれも食の安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証)などの取得が必要だ。水産物の場合は「計画的に水産資源の管理が行われ、生態系の保全に対する配慮(天然水産物の場合)」も求められている。

 そのため選手村に納入するような特産物を抱えている都道府県では、国際的な認証取得の動きが目覚ましい。

 認証取得数の上位の静岡県、鹿児島県は、公式サプライヤーになっている「コカ・コーラ」の「綾鷹」用の茶葉のための認証取得が多く、愛媛県はゼスプリブランドのキウイフルーツが多いためだ。

 福島県も上位にランクされているが、同県の場合は、東日本大震災による原発事故発生に伴う風評被害払しょくを狙い、県をあげて、JGAP取得日本一宣言をしている。

 認証取得に熱心な地域がある一方で、気になるデータもある。

 農林水産省で実施した「GAPに関する食品関係事業者の意識・意向調査」(平成29年実施)によると、「GAP認証取得等農畜産物の取扱について」取引要件にしたり、意識して仕入れているところは2割にも満たない状況だった。また「仕入れていない・わからない」を選択したところに対し、「今後、仕入れる意向があるか」を聞いたところ、7割以上が「予定はない・わからない」という回答だった。

 オリンピック契機に、国際的認証が広く知れ渡る

イオングループは積極的に認証商品の売場展開を行い、消費者啓蒙を行っている
イオングループは積極的に認証商品の売場展開を行い、消費者啓蒙を行っている

 現在のところ、消費者レベルでの認証取得についての認識は、イオングループの店内において「GAP」、「MSC」(MSC(海洋管理協議会)の厳正な環境規格に適合した漁業で獲られた水産物の証。海のエコラベル)、「ASC」(養殖水産物に対するエコラベル)の認証取得済みマークをよく見かけるものの、消費者のレベルでは、まだまだ浸透していないという現実がある。しかし、東京オリンピック・パラリンピックを契機に、食品の調達基準の国際標準が広く知られることになれば、とくに情報感度の鋭い生活者の間では、日常的に認証取得済みの食材を求める動きが出てくるだろう。もちろん、「いまのままでも安心・安全に心配はないのだから」という消費者が大半を占める状況に大きな変化はないとしても、風穴があくことは十分に予想できる。

 そうなれば食品スーパーとしても、何らかの対応が必要になってくるだろう。

 当セミナーでコーディネーターを務めた勝野美江氏は「オリンピックと食の関係を、2020年だけのものにしない。この経験・体験を次の時代につなげていくことが重要だ」と語り、食品事業者であるエームサービスの紅林氏は2020年後の食材について次のような見通しを立てる。

2020年以降は、日本においても認証取得がデファクトになっていく」

 食品小売事業者はいまから情報収集をしたり、取引先開拓の努力を進めることで、競合に先んじることができるだろう。

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