広島の超人気直売所に学ぶ、生産者・店舗・お客「三方よし」のビジネスモデル
あえて目立つところに荷捌き場を設置する理由
筆者が広島店を訪れたのは今年6月末、大雨に見舞われた平日の午前中のこと。事前に「雨の平日はお客さまの数は少ないですよ」と聞いていたので、条件の悪い日に来てしまったなと思いつつ、少し閑散とした売場を想像していた。しかし現地に到着すると、駐車場は7割ほど埋まっている状況。売場内も悪天候で人通りの少ない外とは裏腹に、多くのお客でにぎわっていた。
現地に到着してまず目に入ったのは、生産者が荷捌き場に軽トラックを横付けし、商品を搬入している様子である。一般的な食品小売店であれば店舗の裏手など目立たないところに納品場所を設けているが、広島店ではあえて店舗正面に近接した場所に荷捌き場を設け、入店前から商品の鮮度感をお客に伝える工夫を凝らしているのだ。
そして売場は、主通路を時計回りにして青果・花きから始まり、精肉、鮮魚、加工食品、総菜、カフェと続くレイアウトとなっている。各部門で新鮮な商品が所狭しと並ぶ一方、販促物は部門名を示すサインやいくつかの吊り下げ看板、ポスターなどにとどまり、商品のシズル感を阻害しないようにしている。その中で次々と来店するお客の多くは買物カートを手に取り、最初からカゴを2つ載せる人もいるなど、買物への“本気度”が感じられた。
「旬」と「バラエティー」を訴求する生花と青果
部門別に詳しく売場・商品をみていこう。
店内に入ってまず圧倒されるのは、入口付近に配置された花き売場。切り花が中心となっており、かつ取材時であれば「あじさい」のような、庭先に咲くような季節の花であふれているのが印象的だった。「年間で見ると6月は花きの売上が低い傾向にあるが、生産者の方に協力していただき、毎日安定して商品を販売できている。時季を問わず旬の切り花を豊富に揃えることで、お客さまから支持をいただいている」と、広島店の場長(店長)を務める東直樹氏は説明する。
青果では年間を通し売上上位である、トマト、キュウリ、ほうれん草のほか、取材時に旬を迎えつつあった枝豆が存在感たっぷりに並んでいた。また、「祇園パセリ」「ミント」といったハーブ類ももちろん地場産でまかなっているほか、広島名産の「赤しそ」は大束を10束ほど抱えるようにしてレジに進むお客もみられるなど根強い人気をうかがわせた。また果物は、やはり広島名産のレモンのほか、ブルーベリー、プラム、すもも、びわなどを豊富に展開していた。
青果は生産者が直接売場で陳列作業も行うため、生産者とお客との距離がとくに近い部門となっている。実際に売場では生産者、店舗従業員、お客がそれぞれ話し込む様子も見られた。そうした密なコミュニケーションが生まれるなかで、「ほうれん草1つとっても、『○○さんのほうれん草』を求めて来店されるお客さまも多い」(東場長)という。
精肉・鮮魚も「広島県産」を徹底的にアピール
次に精肉売場では、「JAのお肉屋さん」と銘打ち、「広島和牛」「お米(マイ)ポーク」などを中心に広島県産の銘柄肉を豊富に展開。一部商品は対面販売も行い、好みのカットやギフトセットの注文なども受け付ける。
また、青果と精肉では、JA全農ひろしまが推奨する耕畜連携資源循環ブランド「3-R(さんあーる)」の商品も各所で訴求する。これは生産過程で資源循環型農法を取り入れた商品をブランド化したもので、前述の「お米ポーク」も含まれる。「3-R」商品についてはパッケージにブランドシールを貼付するほか、青果売場ではコーナー展開するなどして、「地域の環境と未来を守る」ことの重要性を商品を介して伝えている。
鮮魚売場も、瀬戸内海を望む広島県ならではの豊富な種類の地魚を展開。毎週火曜日と金曜日は尾道からの産直品が並び、取材時(金曜日)も「本メバル」「コロダイ」「あこう」「生穴子開き」「舌ビラメ」などを販売していた。
また、これら新鮮な魚介類を使った刺身の盛り合わせや、寿司、巻き寿司、ちらし寿司などの加工品・総菜も訴求。地魚の刺身が詰め込まれた「瀬戸内盛合わせ」を試食したが、個々の魚の味わいが濃く、旨味たっぷりであった。
そこから続く総菜売場では、広島と言えば…の「お好み焼き」や、広島牛を使った「焼肉弁当」、季節野菜を使ったカレーなどを展開。総菜についても“広島色”を前面に打ち出した商品構成となっている。