世界最大の調査会社 日本トップが教える「お客がスーパーに求めるもの 関東と関西の違い」

2020/01/03 05:55
ダイヤモンド・チェーンストア編集部
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日本で「利便性」が必ずしもECの優位性とならない理由

海外のスーパーマーケット
海外のリテーラーでは、小型化、取り扱いSKUの絞り込み、インショップ型売場の導入という3つのトレンドがみられる(写真はテスコ)

──海外のリアル店舗小売業は、日本の小売業よりもECチャネルを上手に活用しています。

バーウェイ 欧州では、リアル店舗とネットショップを併用する「オムニチャネル」が広まっています。インターネットで商品を注文して、最寄り店に受け取りに行くといったように、目的によって、オンラインとオフラインを使い分ける顧客が多いようです。一方で、日本のネットスーパーのように、EC上でリアル店舗と同じ商品をラインアップするケースは少ないですね。

──食品のEC化率で先行する国と比べ、日本で生鮮を含めた食品ECがまだ途上である理由はどこにありますか?

バーウェイ 日本と海外では、市場構造にかなりの違いがあるので、それが影響しているとも考えられます。食品について調査したところ、日本では約60%の消費者が、「ネットで買物をしたくない」と回答しました。食品の場合、ネットショップでは手数料がかかるので、割高になってしまうし、品質を「自分の目で確かめたい」というニーズも根強いのが理由のようです。日本では、SMが身近にたくさんあるので、欧米のように、利便性が必ずしもECのアドバンテージとはならないわけですね。

──では、海外のリテーラーと比べて、日本の小売業をどのようにみていますか。

バーウェイ 欧米に比べて、売場のレベルはとても高いと判断しています。たとえば、欠品がきわめて少ないのは、売場オペレーションが行き届いている証拠でしょう。また、日本の大型SMは、海外のSMに比べて品揃えが豊富で、顧客満足度も高いと考えられます。とはいえ、長所だけでなく、短所もあります。品揃えが豊富で、欠品が少ないだけに在庫が増え、商品回転率が低下するリスクを抱えているのです。また、欧米のリテーラーに比べて、サプライヤーとの戦略的な協業が進んでいません。とりわけ、日本のSMの場合、長所についても、短所についても、海外では見られない「卸」の介在が、大きく影響していると考えています。

──「卸」介在の影響をどのようにみていますか。

日本のスーパー
日本において、小売業とメーカーの協業が、欧米の小売業と比べて、遅れている点が課題だ(写真はイメージ、本文とは関係ありません)

バーウェイ 日本の場合、食品メーカーはカテゴリー別に細分化されている一方で、SMも寡占化が進んでいません。食品市場は普通に考えれば、非効率な流通構造になるはずです。ところが、中間に食品卸が介在しているため、スムースな流通が実現できるのです。SMが幅広いラインアップをしているのに、欠品することなく、商品を陳列できるのもそのおかげです。しかし、食品卸が便利なばかりに、SMも食品メーカーも食品卸に依存しすぎており、製・販の協業が進まないのです。あるいは、製・配・販で協業を進めようとしても、プレーヤーが多いので話がまとまりにくく、余計な時間がかかってしまうというわけです。

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