店員の万引きを機に、店のマネジメントを大胆に変える方法
情報共有の徹底が“悪事の温床”から決別する第一歩
今回は、店員による万引きをきっかけに、店のマネジメントのあり方を考え直した事例と言えよう。私が導いた教訓を述べたい。
今後すべきこと①
万引きは、店のあり方を表す
万引きという深刻な問題を契機にマネジメントを見つめなおしたことは、店主の力量のレベルが高いことを物語っている。私の観察では、多くの会社は万引きをした店員や社員を叱り、社内に「かん口令」をしいて終えようとするケースが目立つ。それも1つの解決策かもしれないが、問題の本質にメスを入れているようには見えない。
今回の事例では、万引きをする店員が、6人のうち、半数を占めていたのは店の管理に問題があったからなのではないだろうか。たとえば、定着率が低いことだ。勤続年数2年は、相当低い。人の出入りが激しい場合、何かとトラブルが起きやすい。店員たちの万引きも、その1つととらえるのが妥当だろう。
店主は現在、店員間の情報共有を徹底させようとしている。万引きに限らず、店員の問題が生じるとき、それぞれが個々でバラバラに動くような態勢になっている場合が多い。そのことが、状況いかんでは悪事をはたらく誘因になっているケースがある。日ごろから、店員たちが互いに結びつく場や機会を意識して増やしていくようにするべきであり、今回はその好事例とも言える。
今後すべきこと②
情報共有を徹底させる
店主は、「事前に店員の動きを把握することができる」とも話していた。店員間の情報共有が浸透すると、何かがあったときに、あるいはありそうな場合、誰からか連絡が入るようになりつつあるという。この態勢が万引きだけでなく、仕事についての情報共有を深めるのではないだろうか。仕事のミスやトラブルがしだいに減り、この店で働くことが楽しくなり、定着率が上がるようになる。
これがますます、職場の雰囲気をよくする。そして、仕事力の高い店員を育成する土台や風土となる。情報共有には、実はそれほどに深い意味がある。ここに目をつけたことは、極めて優れた判断なのではないだろうか。
万引きを否定するのは当然としても、そこから先にどれほどに考えることができるか。そこが、大きなポイントなのだ。
神南文弥 (じんなん ぶんや)
1970年、神奈川県川崎市生まれ。都内の信用金庫で20年近く勤務。支店の副支店長や本部の課長などを歴任。会社員としての将来に見切りをつけ、退職後、都内の税理士事務所に職員として勤務。現在、税理士になるべく猛勉強中。信用金庫在籍中に知り得た様々な会社の人事・労務の問題点を整理し、書籍などにすることを希望している。
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