第71回 喉元過ぎれば…コロナ前に後戻りするショッピングセンター
新型コロナウイルスが我々に提示した大きな2つのこと
以上のように新型コロナウイルスは多くのことを我々に気づかせたわけだが、特に注目すべきは、既に始まっている人口減少はますます流動客を減少させ消費市場を縮小させる点だ。コロナ禍は、この起こりうる市場の縮小を3年間にわたる「行動の自粛」と言う制約を通して現実のものとして我々に見せつけた。人口減少はかなり以前から指摘されているが、我々は茹でガエルのごとく今に至っている。
もう一つは、収益モデルが「賃料収入1本」というシンプルであり分かりやすい構造である反面、変化には非常に脆弱であったことである。2011年の東日本大震災の際も、計画停電によるSCが休業を余儀なくされた。その時の経験が今回に生きたかというとそうではなく、SC(賃貸人)とテナント(賃借人)は同様に苦しくなり、賃料交渉で双方疲弊することを経験した。
「元通り」の日本のSC 創意工夫を無駄にするな
最近ではコロナ前を超える、超えないと報道が毎日のようにされる。要はコロナ前と同じことが再開されたということである。SC業界でも接客ロールプレイングコンテストもミステリーショッパーも再開した。これも悪いことではないが、また同じことを繰り返し、次の災禍の時、同じように窮地に追い込まれることになるだろう。
コロナ禍でECとBOPIS(EC購入・店舗引き取り)、デリバリー、D2C、ゴーストレストラン、SNSによるコミュニケーションとライブコマース、アプリによる接触チャネルの増加、多彩な決済手段など多くのことがスタートし拡大した。これらすべてが消費者に受け入れられないにせよ、この流れを止め、また昔のアナログな毎日に戻らないことを期待したい。コロナ禍の3年間を我慢の3年間ではなく、次のステージに向かうための準備期間とすることが、我々に課された使命だと考える。
西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役
東京急行電鉄(株)に入社後、土地区画整理事業や街づくり、商業施設の開発、運営、リニューアルを手掛ける。2012年(株)東急モールズデベロップメント常務執行役員。2015年11月独立。現在は、SC企業人材研修、企業インナーブランディング、経営計画策定、百貨店SC化プロジェクト、テナントの出店戦略策定など幅広く活動している。岡山理科大学非常勤講師、小田原市商業戦略推進アドバイザー、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒
ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営 の新着記事
-
2024/12/03
第103回 マーケティング2.0へ!SCは「神社の参道商売」と同じである理由 -
2024/11/18
第102回 SCのマーケティングは「マスマーケティング」である理由 -
2024/10/31
第101回 今年の新入社員の30年後は「全員管理職」?人口減時代のビジネスとは -
2024/10/17
第100回 30年後、社会と商業はどうなっているのか? -
2024/09/27
第99回 「顧客を把握できる」ECに対し、リアル小売が取るべき3つの戦略とは -
2024/09/13
第98回 百貨店とSC、「インバウンド一色」への懸念とは
この連載の一覧はこちら [103記事]
関連記事ランキング
- 2024-12-12「オーケー」後の関西 イオンリテールがねらう都市型SCそよらで脱同質化
- 2024-03-08ストア・オブ・ザ・イヤー2024を発表!今、行くべき店はこの店だ!全42店舗掲載
- 2024-11-18第102回 SCのマーケティングは「マスマーケティング」である理由
- 2024-04-05第88回 減少、閉鎖続く!2023年度のSC動向まとめと24年以降の展望
- 2024-12-03第103回 マーケティング2.0へ!SCは「神社の参道商売」と同じである理由
- 2022-11-21第58回 自らが決めた「定義」に縛られた百貨店とSCが生き残る方法
- 2024-08-15第96回 ショッピングセンターの売上がいま“なぜか”好調な理由とは
- 2024-06-16コロナ後も堅調! ミールキットのパイオニア、ヨシケイの現在地
- 2019-12-26SC総数が16年ぶりに前年割れ、閉鎖が新設を上回る
- 2020-04-03イオンモール、新型コロナでテナント賃料を減免と発表 3~4月の2か月分