渋谷の本店閉店で東急百貨店が向かう “百貨店”にこだわらない「新しいリテール」の姿とは
2023年1月31日に閉店し、55年あまりの歴史に幕を下ろした東急百貨店本店。2020年3月31日に閉店した東急百貨店東横店とともに「渋谷に東急のデパートがなくなった」とのニュースに、一抹の寂しさをおぼえた人は少なくないだろう。
しかし、「100年に1度」といわれる渋谷の再開発の中で、東急百貨店は時代に合わせた新しいリテールの形を目指し、次々と打ち手を講じている。同社が「融合型リテーラー」と呼ぶ「進化するリテール」のねらいと施策について、キーパーソンに話を聞いた。
「100年に1度」の再開発の中で幕を下ろした本店
2023年1月31日。この日の19時、東急百貨店本店の前を大きな人だかりが取り囲んでいた。1967年の開店以来、55年あまりの歴史を持つ同店がこの日、多くのファンに見守られながら最後のシャッターを下ろした。
その3年前、2020年3月31日には渋谷駅に直結する「東急百貨店東横店」が80年あまりの歴史に幕を下ろしている。沿線開発とともに、渋谷という街の開発に深く関わってきた東急の象徴ともいえる2つの百貨店がついに姿を消した。
その一方で、いま「100年に1度」ともいわれる渋谷の再開発が進行している。
2012年4月、東急文化会館の跡地に「渋谷ヒカリエ」がオープン。翌2013年3月には東急東横線渋谷駅ホームが地下化。2019年11月には東急、JR東日本、東京メトロとの共同出資により「渋谷スクランブルスクエア」がオープンした。久しぶりに訪れるとその変貌ぶりに驚かされるほど、渋谷という街は進化を続けている。
「この10年もの間、東急グループ一体で渋谷の再開発を進めてきた。その中で私たち東急百貨店も、いま求められるリテールの新しい業態にチャレンジしている」
東急百貨店OMO推進事業部長の伊藤正貴氏はこう語る。「東急百貨店本店の閉店」というトピックだけを切り取れば「一つの時代の終わり」とネガティブに受け止めてしまいがちだが、すでに東急百貨店は次のステージに向けて動き出しているのだ。