[デトロイト 31日 ロイター] – 米アマゾン・ドット・コムが運輸産業への進出を拡大している。自動車の製造を除けば、実質的にすべての関連事業に手を広げている状態だ。
アマゾン幹部や業界幹部20人以上への取材とロイターの分析によると、物流、クラウド、デジタルサービスでの強みを生かすとともに、ロボット工学から製造に至る関連産業と手を組むのが同社の戦略だ。
サプライチェーンの隅々まで新規投資や提携を張り巡らせ、自動車業界のベテラン人材を起用し、大量の特許を取得。宅配便大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)から配車大手ウーバー・テクノロジーズまで、顧客企業や提携企業に戦いを挑む格好になっている。
運輸コンサルタントのジョン・エリス氏は、顧客企業は「震え上がっているはずだ」と言う。消費者の自動車への関心は薄れており、「乗っているのがフォードかクライスラーかシボレーかBMWかなど気にかけない」人が増えると予想した。
トヨタ自動車の元幹部で、2017年にアマゾンの「アレクサ・オート」部門責任者に起用されたネッド・キュリック氏はロイターの取材に対し、「お客様に価値をもたらせると判断した場合には、アマゾンの各サービスをより緊密に統合する方法を常に考えていく」と書面で回答した。
特許攻勢
アマゾンが2016年12月から19年5月に米当局から取得した特許5000件以上をロイターが分析したところ、うち少なくとも210件がドローンや自動運転車など運輸に関するものだった。これは競合するアップルやグーグルの親会社アルファベットを凌ぐペースだ。
乗客輸送に関する特許も何件か取得しており、2017年には自動運転車ネットワークを通じてオンデマンドでサービスを提供する特許も得ている。これはウーバーや同業のリフト、グーグル傘下のウェイモだけでなく、主要顧客であるフォルクスワーゲン(VW)やフォード、ゼネラル・モーターズといった自動車メーカーとも競合する可能性がある。
アマゾン広報は「特許取得には数年間を要するため、現在の製品・サービス動向を必ずしも反映していない」と説明した。
アマゾンは運輸関連の投資も強化しており、2月以来、他の大手投資家と共同で著名スタートアップ企業3社に20億ドル近くを提供した。
過去2年間にはスタートアップ3社の買収により運輸システムを拡大している。
クラウド
同社は330億ドル規模の子会社「アマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)」を通じ、顧客企業との提携事業も拡大している。今年はフォードおよびVWとクラウド事業で提携した。
AWS幹部によると、独複合企業シーメンスも加わるVWとの提携事業は、世界中にあるVWの工場122カ所とサプライヤー企業の工場約3万カ所をデジタルで結ぶ「産業クラウド」の構築を目指すものだ。
フォード子会社オートノミックのギャビン・シェリー最高経営責任者(CEO)によると、同社とフォード、アマゾンの3社は運輸業界のクラウド・プラットフォームの構築で協力している。
アレクサ
アマゾンの自動車産業への参入では、同社の音声アシスタント「アレクサ」が中心的な役割を果たしている。
同社はアレクサの自動車への搭載で多くの自動車メーカーと協力しており、GM、フォード、ボルボ、ホンダとの間では、オンラインで注文した品物が自動車に配送されるサービスで提携した。