イケア、急成長するフード事業の秘密!社内で「もっともソファが売れる場所」と呼ばれるワケ

兵藤雄之
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フードは店舗における客との最後の接点

IKEAプラントボール
植物性食品のミートボール「プラントボール」

 ではなぜ、日本のフード事業の売上比率は、グルーバル平均よりも高いのだろう。

 フード事業の役割は、「買物の合間におなかを満たす場所」であり、「ソファを一番売る場所」だが、日本においては、さらに「スウェーデンの食文化を伝える場でもあり、食の機会を通して『イケアって、安い!手ごろ!』と思ってもらえるような価格政策もとっている」(佐川氏)

 例えばスウェーデンレストランの「カレー」は290円(税込)、スウェーデンビストロで提供する「ベジドッグ」は80円、「ホットドッグ」100円、「アイスクリーム」にいたっては50円という価格だ。

 イケアの標準的な店舗では、出入口近くにスウェーデンビストロを設置していることが多いが、イケアとの接点の最後の最後に「『ぜひ、また、イケアの低価格を体験しにいらしてください』という思いを込めた価格設定でもある」(同)という。

 2012年、イケアのサステナビリティの方向性として、「ピープル・アンド・プラネット・ポジティブ」(人、社会、地球にポジティブな影響をもたらすことを使命とする)戦略が示された。

 この流れのなかで、フード事業が特に力を入れているのがプラントベース(植物由来)だ。

 2015年にプラントベース初の取組みになる「べジボール」を発売。2019年にプラントベースフード(植物性食品)のメニューとして、ベジドッグ、プラントベースソフトアイスを相次いで発売。2020年には、プラントラーメン(日本のみ)、イケアの大人気商品をプラントベースで再現した「プラントボール」、そして2021年はプラントベースのひき肉の販売を開始した。

 プラントベースフードというと、導入が進む海外でも、従来の動物性原料を用いたものに比して、未だ価格が高いのが一般的。そのため幅広い層には手が届きにくい。それに対してイケア・ジャパンの親会社であるIngkaグループでは、日本を含むすべてのマーケットにおいて、2022年10月より、肉由来の食品と同等もしくはそれ以下の価格で植物由来の食品提供を開始している。イケア・ジャパンではすでに世界のマーケットに先駆けて取り組んできた。

 例えば、日本では顧客の大半が注文するというスウェーデンレストランのミートボールは「8個790円」に対し、プラントボールは「8490円」で提供されている。「これはイケアだけの努力でできることではなく、メーカーさま、サプライヤーさま、従業員も含めて、『なぜ、イケアがプラントベースを提供するのか』、その価値観を共有できているから」(同)

 日本でプラントボールを選ぶ顧客の比率は30%を超えており、世界一だという。

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