マツモトキヨシホールディングス(千葉県:以下、マツモトキヨシHD)とココカラファイン(神奈川県)は4月26日、資本業務提携に関する検討および協議を開始する覚書を締結したと発表した。資本提携にとどまらず、仮に経営統合に至れば売上高約1兆円のドラッグストア企業が誕生することになる。両社は資本業務提携に向けてなぜ動き出したのか。
2019年9月末までの合意、最終契約の締結をめざす
マツモトキヨシHDは、「1st for you. あなたにとっての、いちばんへ。」をグループ経営理念に掲げ、常にお客の視点をもって、新たな付加価値の創造と心を込めたサービスを提供することで継続的な成長と企業価値の向上を図り、ドラッグストア業界のリーディングカンパニーとしてさらなる飛躍をめざしている。
2019年3月末現在、日本全国にドラッグストア・調剤薬局を1654店舗(うち調剤薬局289店舗)展開。多様な店舗フォーマットを持つことで知られ、最小サイズは駅構内の売場面積15坪程度、都市立地は同60~100坪、郊外立地は200~250坪が標準サイズだ。
化粧品と一般用医薬品(OTC)関連の販売額はドラッグストア企業の中でダントツ。2019年3月期の化粧品売上高は対前期比4.7%増の2277億円、OTC関連は同2.8%増の1762億円となっている。
一方のココカラファインは「人々のココロとカラダの健康を追求し、地域社会に貢献する」という経営理念の実現をめざしている。
日本全国に展開するDgS・調剤薬局1354店舗(うち調剤薬局292店舗:19年3月末現在)と介護周辺事業との連携を図り、医療・介護に携わる多職種連携により地域における在宅医療・介護を一体的に提供する「地域におけるヘルスケアネットワークの構築」を社会的使命と位置づけ推進している。
店舗フォーマットは都市型、商店街型、住宅地型、郊外型に分けて、それぞれ最適な商品構成を組み立てている。2019年3月期の化粧品売上高は対前期比3.4%増の1080億円、OTCは同1.7%減の528億円となっている。
マツモトキヨシHDとココカラファインは資本業務提携を通じて合計3000店舗超を展開するDgSと調剤薬局のシナジーを追求するとともに、医薬品等商品の仕入れに関する調達面と物流面の共同化やプライベートブランド(PB)商品の共同開発などを進め、両社で競争力を向上させながら、地域社会に新たな価値を提供することをめざす。
今後、両社で設置する「資本業務提携準備委員会」のもと、業務提携の具体的な内容について企画立案、検討・検証を行い、業務提携に関する検討・協議を進めていく。また、両社の長期的な発展と継続性のある協業を追求するため、相互に相手方の株式を保有する資本提携に向けた協議を開始する。
具体的な内容と条件については、今後、両社で協議のうえ決定する。19年9月末までの合意および最終契約の締結をめざす。
次のページは
マツキヨとココカラのタッグのスゴイ相乗効果!
「まさに理想のカップル」
マツモトキヨシHDの19年3月期業績は、売上高は同3.1%増の5759億円、営業利益は同7.3%増の360億円。ココカラファインの19年3月期業績は、売上高は同2.5%増の4005億円、営業利益は同5.8%減の129億円となった。
ともに都市部立地の店舗で利益を多く確保しており、資本業務提携を通じて人口が厚い都市エリアの需要を両社で押さえることは理にかなっているといえる。また、利益率の高いヘルス&ビューティケア(H&BC)カテゴリーの販売額は競合他社が追随できない規模となり、プライベートブランド商品のさらなる展開にも弾みがつく。
さらに両社はデジタルへの投資にも積極的だ。
マツモトキヨシHDは2015年7月からオムニチャネル化を本格始動。現在はオムニチャネル基盤から得られたビッグデータを活用し、新しいビジネスに乗り出している。
一方のココカラファインは2016年からデジタルへの取り組みを本格化。2016年6月にはスマートフォン向けアプリ「ココカラファイン公式アプリ」をリリース。2016年10月にはWEBサイトをリニューアル。2018年3月期を「ワン・トゥ・ワンマーケティングを行うための土台づくりの年」と位置付け、「多様化する販促媒体を利用したワン・トゥ・ワンマーケティングの確立」を進めてきていた。
ドラッグストア業界に詳しいある証券アナリストは「まさに理想のカップル。両社はそもそもめざすところが同じ。時間はかかるかもしれないが、資本提携にとどまらず、経営統合までいくだろう」と話す。
両社が仮に経営統合に至れば、都市部でダントツのH&BCシェアを持つ、売上高約1兆円のオムニチャネルDgS企業が誕生することになる。