「薬剤師以外のピッキング可」はビッグチャンス! 池野隆光ウエルシアHD会長、「在宅」に期待
ウエルシアホールディングス(東京都/松本忠久社長:以下、ウエルシアHD)の2019年2月期決算が発表された。売上高は7791億4800万円で対前期比12.1%増、営業利益は290億4500万円と同0.8%増、当期純利益は174億2300万円と同1.5%増と好調だった。業界動向とウエルシアHDの方向性について池野隆光会長が語った。
自助努力によって市場を伸ばした
日本チェーンドラッグストア協会(東京都/青木桂生会長)によると、ドラッグストア業界の2018年度の店舗総数は2万228店舗。市場規模は対前年度比6.2%増の7兆2744億円だった。
この成長の要因は3つあると考えている。①食品の強化、②調剤併設、③インバウンドの3点だ。ここにきてインバウンド需要は若干減速気味とも推測される。しかしながら、各企業は、立地によって業態を対応させながら出店し、また業態を変化させながら成長し続けているといえるだろう。
コンビニエンスストアや食品スーパーの市場が成熟気味ななかで、上記のような自助努力により成長しているのがドラッグストア市場である。
では、その中で、ウエルシアグループはいかに進化すべきだろうか?
今は、何を改革すべきか、を考えている最中だ。
まだ、ドラッグストア業界は成長段階にあるが、業績が良いうちにさまざまなイノベーションの手を打ち、企業内改革を図っていきたい。いまやらなければ間に合わないと考えている。
事業会社は多々あるが、中核企業は売上構成比93%のウエルシア薬局(東京都)である。ウエルシア薬局の好不調がウエルシアグループに及ぼす影響は大きい。そんなこともあって、この度、水野秀晴を会長に松本忠久を社長に交代する人事を決めた。
ウエルシア薬局の営業の組織面においては、これまで3支社制で運営してきた。しかし店舗数や展開エリアの拡大を考慮して、5支社制に変更。これにより、いっそう細かな管理に徹したい。
「在宅」は次の大きな収益源
調剤については、2019年4月に薬剤師370人が入社した。これに既存の薬剤師を加えると社内にはドラッグストア業界では最大規模の約5000人の薬剤師を抱えることになる。2019年2月末現在1287店舗で調剤併設型薬局を展開しているが、われわれは、薬剤師の人数が多ければいい、とは考えていない。
むしろ薬剤師の業務の質を上げることが問題だ。
これからの10年を考えると、世の中は「在宅」に向かっていかざるをえない。しかし、現在のウエルシアは「在宅」の要望があっても、なかなか応えることができていない。毎年、処方箋枚数が増加する結果、薬剤師の数が足らずに、店外に出て行くことができないのが現状だからだ。
この4月の厚生労働省から都道府県に出された通知によれば、薬剤師の指示の下で一定条件を満たせば、薬剤師以外の人間が調剤のピッキングに当たってもかまわないということになってきた。当社には、それに備えて教育されてきた人が約1200人いる。その人たちが薬剤師の一部の調剤業務を担ってくれるとすれば、その分、薬剤師の手が空くことになるので、一挙に薬剤師が「在宅」に向かうことが可能になる。
在宅薬剤師の拡充と質の向上を図ることを進めれば、大きな収益源になるものと期待している。それは数年のうちに実現できるはずだ。
さらに「在宅」に向かったときの患者様のケアをするために、4月には栄養士を83人採用した。既存の栄養士をともに「在宅」に向かって、何をすべきか、どういうプログラムが有効なのか、効率も含め考え、それによって収益の拡大が望める。
イオングループでもっとも収益の高い会社といわれたい
ウエルシアが考える24時間営業は、「地域の“困った”を救っていく」。その考え方をもとに、一定のドミナントの中で、“困った”に対するプラットフォームとして介護や傷病に対して適切なアドバイスを行う。これが地域にとって重要だ。
現在(2019年2月末)287店舗で展開しているが、どの地域、どの場所が最適なのかを考えて出店し、設置をしていく。
われわれは何のために事業をするのか?
いまさらということはあるけれども、何のために事業を行うのか、われわれの価値はなんなのか?
何のためにという目的意識をしっかりと持って、お客様に愛されるためには、社会問題に対して誠実に取り組んでいく企業でいたい。
また、それを重要視したいと考えている。
ウエルシアグループは、まだまだ発展途上だ。われわれの存在価値を確認しながら、「イオングループでもっとも収益の高い会社」といわれるように誇れる企業として邁進したい。(談・文責千田直哉)
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