単純な足し算ではない 同盟の背景にあるもの
師走のスーパーマーケット業界を大型提携の話が駆け巡った。有力スーパーマーケット(SM)のアークス、バローホールディングス(バローHD)、リテールパートナーズの3社がそれぞれ株式を持ち合うかたちで、資本業務提携にいたることを発表したのだ。何がその背景にあったのだろうか?
業務資本提携の骨子を読むと、既存領域の強化として地場商品や産地情報の共有、資材備品などの共同購入、店舗開発などのノウハウの共有を挙げ、次世代に向けた取り組みとしてはカード事業や金融・決済事業、スマートストアの共同研究などを挙げている。
統一のプライベートブランド(PB)開発については、それぞれ別の共同仕入れ機構に加盟していることから現時点では骨子には入れていない。とはいえ、約60億円という投資(株式持ち合いとはいえ、投資には違いない)に見合うリターンをそれぞれの株主に指し示すためには、規模のメリットという目に見える効果の打ち出しも必要となるだろうとも思うが、背景にあるのは、それほど単純な足し算の目論見だけではない。
結果的に、イオンが1つのトリガー
記者会見で重要だったことは、アークス横山清社長の「リアルとバーチャル、業種を超える戦いなど、今までとは全く違う競争時代になっている。規模の利益だけではダメだということを急速に感じはじめ、具体的にどうするかを考えていた矢先、我が国最大の流通企業が中期計画で、現状分析・未来計画を立てた。(そのことについて)自戒している折、(かねてより)接点があった2人(バローHD田代正美社長とリテールパートナーズの田中康男社長)とたまたま縁があって・・・・・・」と語った点だ。
我が国最大の流通企業とは、言うまでもなくイオンのことだ。エリアごとにスーパーマーケット企業を統合して約5000億円ずつのスーパーマーケット事業会社を作ろうというイオンの計画が、今回の同盟誕生へと至るトリガーとなったというわけなのである。イオンが掲げた現状分析は、そのまま3社の課題と重なる部分が多いだけでなく、より深刻な部分もある。「(オンラインセールスに)仮に3割やられた時にどうするか(を考えれば」、一刻の猶予もない」と横山社長は危機感を露にする。
“同盟”の先には、統合も?
3社が資本業務提携を締結して誕生した新日本スーパーマーケット同盟だが、結成で終わりではない。むしろこれが再編のはじまりだ。各社を核にして、それぞれがSM結集の軸となり、「3兆円連合」をめざすからだ。
バローHDの田代社長は語る。「カード事業1つを取っても、大手はそれで利益を出しており、我々はそれがコストになっている。3社が一緒になることで色々なことができるのではと思う。身のある資本提携になるかは、どれだけ多くの企業に参加してもらえるかがポイントだ」
このように、単独では難しかった“次世代に向けた取り組み”を新日本スーパーマーケット同盟は推進して、勝ち残りを賭けたい考え。同盟の先に何があるか?「将来的にはこの新日本スーパーマーケット同盟の頭に(株)がつくかもしれない」と横山社長は含みを残している。