新MDに手応え!食品メーカーと生鮮食品の商品化に取り組む=サミット田尻 一 社長
新MDに磨きをかけて既存店に導入する
──さて、新MDの検証には6カ月ほど時間を要すると成城店のオープン時に話していました。新MDの現状について教えてください。
田尻 傍から見れば同じことをやっているように見えるかもしれませんが、中身はどんどん変えています。
たとえば、「フレッシュサラダ&カットフルーツ」コーナーの商品は、売価が高すぎましたので、値入れ率を低く押さえて価格を下げることにチャレンジしています。鮮魚部門の「煮魚・焼き魚」コーナーの商品は生の素材に固執することなく、たとえば冷凍エビを店内で焼くといったように、品揃えのバリエーションを増やすことに取り組んでいます。
また、「おためし下さい」のコーナーでは、1週間に6品ほどお客さまへ試食をお勧めしていますが、来店客の約7割の方がコーナーに立ち寄ります。これまで1日当たり1~2個しか売れなかった商品が試食をお勧めすることで10~15個売れるようになりました。
お客さまは自分が食べたことのある商品を継続して購入する傾向があります。当社の店舗が取り扱うグロサリーは1店舗平均1万SKUほどあるわけですから、「おためし下さい」でそれまでお客さまが味を知らなかった商品を売り込むチャンスは大きく広がると考えています。
現在は、バイヤーと「おためし下さい」の担当者が試食の商品を決めていますが、今後はお客さまからの試食リクエストを受け付けようと考えています。お客さまが試食したい商品を売場からお持ちになって、「おためし下さい」コーナーで試食するという段取りです。「サミットの店舗に行けば食べたい商品を試食できる」ということがお客さまに浸透すれば、来店動機になりますし、買上点数アップにもつながると考えています。
──新MDではクロス・マーチャンダイジング(関連販売:以下、クロスMD)にも積極的に取り組んでいました。
田尻 はい。クロスMDのポイントは、売り手側の論理ではなく、買い手=お客さまの論理をどれだけMDに採り入れることができるかどうかです。店舗のオペレーションを標準化する中では、どうしても売り手側の論理が強くなってしまいがちです。それでお客さまに納得してもらい、ご理解いただいているかといえばそうではないでしょう。買い手側の論理をMDへ具体的に落とし込み、その上でどうオペレーションを組むのかだと考えています。これはとても初歩的ですが非常に難しいことです。
昨今、お客さまは青果、精肉、鮮魚といった素材ごとのコーナーではなく、用途ごとの売場を求めていると感じています。たとえば「ケーキをつくろう」となったら1つのコーナーで必要な商品がすべて揃う。パスタやお好み焼きも同じです。そのような1カ所で買物を完結できる売場をどうつくるのか、そして売り手側の論理を壊そうと取り組んだのがクロスMDです。部門という縦割りの仕切りを取り払ったとき、お客さまにとって買いやすいのはどのような売場なのか。それを具現化してからオペレーションを組み直すことを心掛けました。
ただし、われわれはオペレーションをとても重要視していますので、それを壊すのはすごく怖いことです。クロスMDを実践すると、同じ商品が店内のあちこちにありますから、発注作業の効率は悪くなってしまいます。しかし作業の効率云々は売り手側の論理です。お客さまが買物しやすい売場をつくるという考えがまず先になくてはなりません。次にオペレーションをどうするのか考えればいいのです。
──そして、今後は新MDを既存店に導入していくことになります。
田尻 はい。その1号店が4月27日に改装オープンした石神井台店です。
同店の開業後の状況を見ると、内装や什器を新しいものに変え、MDや商品の見せ方を一新することでお客さまが戻ってくるということがわかりました。新MDを導入した新店についてもお客さまから評価されているという感触を得ています。
当社の店舗は売場面積150坪から同1100坪までありますが、売場面積が小さくてもインストア加工にこだわって生鮮食品や総菜を提供していく方針に変わりはありません。それが当社のいちばんの差別化のポイントであり、競合対策なのです。
都心部は人口がまだ若干伸びている状況から、ミニSMやCVS、DgSなど食品を取り扱う競合店が日々開業しています。12年度は新MDに磨きをかけて既存店への導入を進め、しっかりと足場を固めていきます。