新中期経営計画に取り組むフジ「店、サービスを『くらし』に近づけたい」=フジ尾﨑英雄 社長
農業法人の設立も検討
──SM事業を強化していくため、何に取り組みますか。
尾﨑 第一に生鮮食品の強化です。生鮮でも料理の素材になるものもあれば、加工度を上げ、すぐに食べられるデリカテッセンのような商品も近年は重要になっています。こうした状況を受け、関連会社のフジデリカ・クオリティ(愛媛県/田中正二社長)は、延べ床面積3770坪で3層構造の総菜工場を松山市内に整備しており、この秋には竣工予定です。それら生鮮食品の品揃えを強化しながら、支持される店づくりをめざします。
──この春、生鮮事業部で新規事業プロジェクトを立ち上げると発表していました。
尾﨑 ひとつは農業法人の設立を検討しています。当社が拠点を置く愛媛県は農業の生産地という一面を持っています。また愛媛県だけでなく、事業展開しているのは一次産業のウエートが高い地域ですので、もっと農業へ積極的に関わる動きも必要なのではないかと考えています。
農業従事者は減少しており、後継者が不足すれば耕作地は荒れていきます。農業そのものが衰退すれば、小売業の将来もありません。契約農場を含め農業との連携を強め、収穫された農作物を店頭で販売するまでの仕組みを構築することは必要だと考えています。
──製造小売業に近い方向性ですね。
尾﨑 これからの時代はその発想でないと生き残れないと思うのです。もうひとつ、考えているのは「フジ産直マルシェ」(仮称)という業態です。地場で生産された青果物を販売するのですが、それだけでは安定して商品を供給することは難しい。
商品が手薄な時期には、ほかの地域、そして全国各地の産地で収穫された青果物も扱い、リージョナルチェーンを展開する企業の強みを生かした店にする計画です。産直野菜の販売は、既存店でもひとつのコーナーとして特設していますが、今のレベルは単に売場の一部を生産者に貸している状態です。さらに魅力的な売場になるよう準備を進めています。できれば今年度中には1号店をオープンさせたい。
──水産や畜産についてはどう考えていますか。
尾﨑 丸魚を調理して食べるという食習慣がなくなりつつあり、魚の売上は年々減少しています。ただ、完全になくなることはないでしょうし、直営の売場でしっかり売っていきます。同時に、可能な部分はテナントにお任せするという取り組みも強めています。今後は、信頼できるパートナーがあれば、一緒に会社を設立することもひとつの選択肢になるでしょう。畜産も対面売場についてはテナントにお願いしており、今後はその分野で競争力のある企業との連携を強めていく方向です。
──加工食品の分野では、ユニー(愛知県/前村哲路社長)、イズミヤ(大阪府/坂田俊博社長)と3社協業のPB(プライベートブランド)「Style ONE(スタイルワン)」の品揃えが充実してきました。
尾﨑 これは規模の経済を実現する取り組みで、今後も継続したい。アイテム数は現在、約1000があり、当社の強い武器になっています、また何より大きいのは他社との連携により、バイヤーの知見が広がったことです。これまでの仕事の進め方にとらわれない、積極的な姿勢が身についたように思います。