2011年3月さえきHD始動!3~4年後、1000億円体制をめざす=さえき 佐伯行彦 社長

聞き手:千田 直哉 (株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア編集局 局長)
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 その結果、「がんばったからご褒美においしいものを食べよう」「今日はお祝いごとだからちょっと贅沢しよう」という具合に、何かしら理由を付けては、こだわりの商品をお買い上げになるという傾向が強まっています。

 実際に、当社でも売場づくりに工夫を凝らすことで、「ハレの日」を中心に、ややアッパープライスのこだわり商品が底堅く動いている状況です。そして、当社では昨年末のクリスマス商戦も正月商戦も前年の売上実績をクリアしています。

従業員の試食を通じて、販売のプロを育成する

──具体的には、どのような売場づくりを行っているのですか?

佐伯 たとえばフーズマーケットホックのバレンタインのプロモーションを一例に出します。従来はメーカーさんのチョコレートをメーンに品揃えしていましたが、今年は「手づくりチョコレート」を提案し、関連商品を数多く品揃えしました。このように競合他店とは異なる提案を仕掛けると、お客さまはまるで、眠りから目覚めたかのように、積極的な消費行動を取り始めます。POSデータを分析してみても、単価の高いこだわり商品が売れていますから、「仕掛け」次第で売れるということははっきりしています。

 リーマンショック以降、全国のSMは「安ければ何でも売れる」と安易に考えて、エブリデイ・ロー・プライス(EDLP)一辺倒の価格政策を採ってきました。ところが、安い商品をさらに値段を下げて売っていますから一点単価が下がり、その結果、既存店売上高前年割れも起こしてしまうという、悪循環に陥っていました。

 今の時代、低価格は当たり前で差別化にはなりません。

 むしろ、それに、何をプラスするかがポイントになります。「ロープライスプラス1」という考え方です。その「プラス1」を何にするのかは、各社の戦略次第です。

 その「プラス1」について、当社では、昨年から「地域でいちばん試食を出すお店づくり」に取り組んでいます。「百聞は一見にしかず」という言葉がありますが、われわれ食品小売業にとっては「百見は一食にしかず」です。お客さまに試食をお出しして、その商品の味を知っていただき、「おいしい」と感じていただく。そうすることが、購買の意思決定を左右する、最大の「仕掛け」だと考えます。どんなに工夫を凝らした見事なPOPを書いても、残念ながら味まではお客さまに伝わらないのです。

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聞き手

千田 直哉 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア 編集局 局長

東京都生まれ。1992年ダイヤモンド・フリードマン社(現:ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。『チェーンストアエイジ』誌編集記者、『ゼネラルマーチャンダイザー』誌副編集長、『ダイヤモンド ホームセンター』誌編集長を経て、2008年、『チェーンストアエイジ』誌編集長就任。2015年、『ダイヤモンド・ドラッグストア』誌編集長(兼任)就任。2016年、編集局局長就任(現任)。現在に至る。
※2015年4月、『チェーンストアエイジ』誌は『ダイヤモンド・チェーンストア』誌に誌名を変更。

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