アジアで急拡大、米国も3年で売上3倍!「バロックジャパンリミテッド」の海外戦略とは
中国市場では、まず「バカ売れ」の先行事例を作った
実は、村井社長はキヤノン出身で、同社在籍中にグローバル戦略を手がけていた。ファッションは畑違いだったが、バロックに移籍してからは、豊富な海外経験に基づいて、各国の市場特性に応じたローカライズ戦略を打ち出した。
「例えば、日本の光学・精密機器であれば、客観的なエビデンス(科学的根拠)を示せるので、優れた機能性などを武器にできる。しかし、ファッションの場合、そうはいかない。メード・イン・ジャパンの品質のよさなどはPRできるにしても、定量評価ではなく、デザインやトレンドといった比較が難しい定性評価で、商品価値が大きく左右されるからだ。そこで、マーケティングを駆使し、海外市場での人気を高めるような、ブランディングに全力を注いだ」(村井社長)
海外市場の中でも、香港、台湾、中国といった東アジア攻略を優先したのは、「日本のファッションが、アジアのファッションを先導している」という、アドバンテージがあったから。東アジアでは、「日本で今、すごく流行しているブランドなんですよ」といった具合に訴求すれば、手ごたえを得やすいのだ。
「とはいえ、中国では国内外の、星の数ほどのファッションブランドがひしめき合っている。その中から抜け出すために、まず“目立つベストプラクティス”を作って認知度を高め、それをステップボードにして有力なビジネスパートナーと組み、一挙に中国全土に攻勢をかけるという、二段構えの戦略を立てた」(同)
当時は、中国でもリアル店舗が販路の主流だったので、手始めに直営店を開設し、30店舗まで拡大した。日本のファッションシーンを席巻した「ギャル系のトップブランド」を、「渋谷109のカリスマ店員」が培った接客のスキルとノウハウで売りまくり、「バカ売れしている日本ブランドがある」と、中国でたちまち話題となった。中国企業は“現金”だ。「こちらの思惑通りに、一緒にビジネスをやろうと、向こうのほうから声をかけてきました」(同)
その中から、提携相手に選んだのがベル・インターナショナル・ホールディングス(百麗国際)。2013年に、同社と中国市場の流通を担う合弁会社を設立した。ベルは、ナイキやアディダス、インティデックス(ザラ)、ユニクロなど、日米欧のファッション企業とのビジネスで豊富な実績がある。
現在では、上海や北京など27省に、約330店舗を展開するまでになった。そこで、日本企画商品だけでなく、20代向けの中国企画のオリジナルアイテムも投入しているという。中国の流通業界で力を持つベルと組んでいるだけに、「立地条件のいい店舗物件を確保しやすいし、スケールメリットも生かせるので採算性も高い」と、村井社長は満足げだ。