アジアで急拡大、米国も3年で売上3倍!「バロックジャパンリミテッド」の海外戦略とは

2022/10/26 05:59
    野澤正毅
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    日本製のラグジュアリーデニムで、欧米に攻勢

    マウジー・ビンテージ
    「マウジー・ビンテージ」のデニム

     中国の次に、バロックがターゲットとしたのが米国市場。東アジアのような新興国市場と違って、「ファッション先進国」である米国市場は、日本のSPAでなくても、敷居が高い。それなのに、なぜ米国市場にトライしたのか。

     「難しいマーケットだからこそ、トライする価値がある。なぜなら、それだけに、ライバルも少ない。もし成功すれば、それこそ儲けもの。ブルーオーシャンで獲物を総取りできる先行者利益は、計り知れないほど大きい」(村井社長)

     とはいえ、米国事業もあくまでビジネスであり、闇雲に資金をつぎ込むギャンブルではない。村井社長は、「利益を確保して3年間で黒字化する」という、短期決戦の事業計画を立てた。そのためのスキームとして考えたのが、「ラグジュアリーブランド路線」だ。

     「日本のファッションの強みは何かと検討した結果、“ジーンズ”という答えが出てきた。実は、日本はプレミアムジーンズの産地として世界的な定評があり、名だたるスーパーブランドからも信頼されている。ジーンズなら、当社にとっても得意分野。そこで、ハンドメードで日本製、有名なディーゼルなどよりも価格帯が上、300ドルオーバーのラグジュアリーデニムで、勝負をかけることにした。付加価値が高いだけに、売れれば利幅も大きい」(同)

     2011年に米国進出の準備に入り、ラグジュアリーデニムの新ブランド「マウジー・ビンテージ」を立ち上げた。「ニューヨーク・ファッションウィーク」(ニューヨーク・コレクション)に参加したり、バーニーズ・ニューヨークに期間限定ストアとして出店したりしたところ、好評を博したので20169月、ニューヨークに直営店をオープンした。一方で、米国市場でのブランディングにも、余念がなかった。

     「ラグジュアリーブランドの場合、ボトムアップよりも、トップダウンのほうが浸透しやすいと考えた。まずセレブリティの間で、口コミで人気が広がり、それをアーティストなどのファッションリーダー、インフルエンサーが紹介することで、一挙にブレークするパターンが多い。そこで、当社のビンテージについても、ハイソサエティに人脈を作り、セレブに地道に売り込みをかけた」(同)

    マウジー・ビンテージニューヨーク店
    「マウジー・ビンテージ」ニューヨーク店外観

     そうした取り組みが実を結んで、米国事業の売上は、直近3年間で約3倍に伸びたという。「ニューヨーク店は、情報発信機能などもあるが、家賃などランニングコストも高い。米国事業では、ホールセールやECで売上拡大を図りたい」(同)

     ビンテージは、すでに中国市場でも富裕層向けに販売しており、フランスなどEU圏でにも展開する予定だ。一方で、アジアの新興国市場も、引き続き狙っている。

     「タイは日本企業が参入しやすいので、コロナ禍が沈静化したら、出店を計画している。若者の人口増加が目覚ましく、経済成長も期待できるインド、インドネシアなども市場として有望視している。アジア事業は、中国に近いビジネスモデルになるだろう」と、村井社長は意気込む。海外事業が、バロックにとって第二の経営の柱に育つ日も、そう遠くではなさそうだ。

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