「クックマート」が投資ファンドと資本業務提携 ローカルスーパーの新しい成長の仕方とは

取材・文:大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
構成:松岡 由希子 (フリーランスライター)
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東三河・浜松エリアで12店舗を展開するローカル食品スーパー(SM)のデライト(愛知県/白井健太郎社長)は9月5日、ファンド運営会社であるマーキュリアインベストメント(東京都/豊島俊弘代表取締役:以下、マーキュリア)との戦略的資本業務提携を発表した。ローカルSMがファンドから成長のための出資を受けるケースは珍しい。両社のねらいを取材した。

店舗平均年商は27億円

 デライトは1995年にSM「クックマート」1号店を開業。21年度末の売上高は対前年度比3.0%増の307億円(コンセッショナリー・テナントを含む)と、10年以上連続で過去最高を更新。ここ5年間で新規出店は2店のみであるにもかかわらず、売上高を50億円近く積み増している。

クックマート可美店
東三河・浜松エリアで12店を展開するSM「クックマート」

 この強さの源泉となっているのが、デライトの組織づくりだ。同社はビジョンに「人を幸せにする新しいチェーンストアの創造」を掲げ、個々の店舗で従業員が自発的に考え行動し、能力を発揮することで、強い店づくりができる組織をめざしている。

 この方針のもと、「クックマート」では本部と連携を図りながら、店舗にも仕入れや売場づくり、価格の決定権限がある。現場では店長を中心に、従業員が各部門、また店全体で連携を図りながら店づくりを推進。契約農家による種類豊富な地場野菜やアイデアあふれる店内調理の総菜など、独自の魅力ある売場を構築している。結果、「クックマート」の平均売場面積は約300坪と比較的小ぶりながらも、1店当たり平均年商は27億円にも上り、高い競争力が窺える。

クックマートの店内
クリエイティブも取り入れた内装や、現場のアイデアが発揮された品揃えなど、独自の店づくりで地域の高い支持を得ている

 強い組織づくりの土台となっているのがデライトのユニークな社内制度だ。各種教育制度のほか、家族で参加できる「家族バーベキュー会」や「パートナーさん懇親会」などの社内イベント、さらには個々の働き甲斐や、価値観に合った“適材適所”で活躍することが評価される独自の「人事報酬制度」など多岐にわたり、いずれも社員の声を反映し制度化している。

 現在、同社の正社員の平均年齢は37歳。白井社長自身が42歳と若く、またIT・クリエイティブ業界出身という異色の経歴の持ち主で、固定観念にとらわれず新しい施策に挑戦しており、それが地元の若い人材を惹きつけている。白井社長は「従業員が楽しんで働けること自体が最高の競争戦略。『仕事を通じて人生を楽しめるプラットフォーム』を理想に、モチベーションと能力を最大限に発揮できる組織づくりを進めている」と話す。

ローカルSMが抱えるジレンマを解消する

 そんなデライトの強さに目をつけたのがマーキュリアだ。同社は、

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取材・文

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。

最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

構成

松岡 由希子 / フリーランスライター

米国MBA 取得後、スタートアップの支援や経営戦略の立案などの実務経験を経て、2008年、ジャーナリストに転身。食を取り巻く技術革新や次世代ビジネスの動向をグローバルな視点で追う。

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