イオン22年度1Q決算“GMS黒字化”が示す 吉田新体制下の改革本気度と今後の焦点とは
“追い風参照”とはいえ、驚きのGMS黒字化
特に、総合スーパー(GMS)事業のセグメント利益が前年同期の▲72億円の赤字から、当期は1億円の黒字になり、+73億円の利益改善を実現していることがポイントです。事業セグメントの仕分け直しと会計方針の変更の影響が約6億円の増益要因になっていますが、その影響を除いても十分な損益改善と言えます。
損益改善の要因を眺めると、在庫・人件費の管理徹底というコスト体質の強化が定着するなかで、新型コロナウイルスに関する行動制約の緩和によって衣料の販売が回復し、水道光熱費の高騰を各種努力でカバーできたことが挙げられます。
追い風参考という見方もあるでしょうが、追い風のもとでしっかり成果を出した点をまず評価すべきでしょう。
筆者はここに2020年3月以降の吉田(昭夫社長)体制下のイオンの意気込みを感じます。
イオンは2021年4月9日に「2021~2025年度の中期経営計画」を公表していますが、その中身は従来の同社の計画とは一線を画しています。
財務面のKPI(重要業績評価指標)に関して言えば、従来は営業収益と営業利益のふたつの規模に関する目標が明示されるにとどまっていました。
これに対して現行の中期経営計画では、
さらにこの二つの規模目標に加えて、効率指標であるROE、Debt/EBITDA*(金融除く)が追加されています。*有利子負債を利益であるEBITDA何年分で返済できるかを示す指標
この計画が示された当時、筆者は、計画の方向性の正しさと(従来に比べて)意欲的なKPIの設定に敬意を感じました。しかし、主たる事業でありながら、低収益を続ける国内のGMSとSMが十分な収益を出すことができるのか正直に言って懐疑的でした。
それだけに、第1四半期GMSが営業黒字に転じたことは、筆者の経営陣に対する認識を改めるに十分なインパクトがありました。
VUCA時代に即応、規模と効率改善の両睨みに
イオンの経営陣は、前中期計画のテーマであった4つのシフト(リージョナル、デジタル、アジア、投資)の延長線上に将来を設計することに躊躇はなかったように思いますし、筆者も同感です。
しかし、彼らが次の成長像を描いたときに痛感したのは、
まさにVUCA(Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity)における生存戦略を考えたとき、負債調達力を高めるためにDebt/EBITDAの引き下げを、株式による資本調達の余地を確保するためのROE改善を経営目標としてコミットしてきたわけです。
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