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第51回 エネルギーコストが上がることを前提にしたSC運営とは

ロシアのウクライナ侵攻に端を発したエネルギーの逼迫は、多くの産業にダメージを与えている。装置産業であるショッピングセンター(SC)も他人事ではない。しかし、日本のエネルギー政策の問題は、一つや二つではなく多くの要因が絡み合っている。この分野でまず直面するのは電力不足だろう。今年の猛暑の前に政府が国民に対して節電のお願いが出される異常な事態となった。では、この状況にSC運営はどのように対処したら良いのか。今号では考えたい。

razaklatif/istock

日本のエネルギー事情の現状

 以前から日本のエネルギー自給率が低いことは指摘されてきたが今回の戦禍や猛暑がそれを如実に表す結果となった。

 日本は資源が無く多くのエネルギーを他国に依存しているが、それがどの程度か調べてみたら何と自国での自給率は11.8%(2018年)だと言う(出所:2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 )。他のOECD諸国と比べ相当低い水準だ。ちなみにエネルギー自給率1位はノルウェーでなんと700.3%、次いでオーストラリアの320%、カナダ175.8%と続く。日本は29位のスペイン(27.4%)や33位の韓国(16%)よりも低い。2010年には自給率が20.3%あったがさまざまな要因が重なって現在の水準となったと資源エネルギー庁は説明している。でも20%も10%も相当低いに変わりは無い。

 2011年の東日本大震災の原発を停止してからの10年間、発電量について我々は何をやってきたのだろうか。これを考えると憂鬱にもなるが、この電力不足、そう簡単には解決しそうに無い。

 ということは、この状態を前提にSC運営を考えなければならないことになる。これまでエネルギーの不足は電気代の上昇につながることは予想したが、そもそも流れる電気が足りなくなるという事態は考えていなかった。今もそんなことはお構いなしに巨大な再開発は進み、全国の主要都市には今後10年間で相当の数の高層ビルが登場するが大丈夫なのか憂慮する。

使用する電気量を減らす

 電力不足は環境負荷を減らすためグリーン電力を使うといった観点では無く、そもそもSCで使う電気量を減らすことしかない。電気量を減らすためには、①節電する、②電気を使わない構造とする、③電気を使わない設備とするだが、構造物として造ってしまった巨大SCの節電は相当に難しい。やはり設計の段階でいかに電気量を減らすか、という観点が必要となる

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