赤字幅縮小も5期連続の最終赤字、岐路に立つミニストップ2022年2月期決算

棚橋 慶次
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韓国・フィリピン撤退で経営資源を国内とベトナムに集中

 23年2月期の業績予想では、営業赤字2億円(前期からが29億円増)、当期純利益102億円(前期から140億円増)をめざすミニストップ。これを実現すべく、同社は今年1月に発表したとおり、3月に韓国・フィリピンからそれぞれ撤退。韓国事業に関してはロッテグループ、フィリピン事業は合弁先の地元企業にそれぞれ売却する。

 とくに韓国事業はミニストップにとって国内を上回る主力事業で、店舗数も日本より多い。撤退により営業総収入が単純計算で半分以上落ち込む。それでも売却せざるを得なかったのは、収益性の悪化にある。

 韓国は、日本を上回る“コンビニ社会”で、人口5000万人に対し店舗数は4万を超える。1997年のIMF危機以降、サラリーマンの多くが起業に流れ、コンビニ経営者が乱立した。

 一方で、韓国の上位コンビニ企業は、トップのCU(シーユー)が普光グループの傘下にあるように、どこも財閥グループがバックに控えており、資金力を背景に体力勝負を仕掛けてくる。結果として、競争は激化し、マージンは低くなる。以前、同国に進出したファミリーマート(東京都)とローソン(東京都)も14年までに撤退している。

グループ内でゆらぐミニストップの立ち位置

 ミニストップは23年3月期、国内とベトナムに経営資源を集中する方針を打ち出している。ベトナムではイオン(千葉県)グループ支援のもとでプロジェクトを発足、現地とグループのノウハウを集約させ新しいワンストップ型のコンビニ店舗確立をめざす。

 国内コンビニの日販は前期比104.0%をめざし、営業赤字の圧縮につなげる。純利益に関しては、韓国事業譲渡益により大幅な黒字を確保できる見通しだ。

 ミニストップが打ち出す店内調理拡充・デリバリー強化・冷食の充実……といった施策は、いずれも競合他社も手掛けている。レッドオーシャンの戦いは体力のある方が圧倒的に優位だ。

 ミニストップの店数は2000店前後と、国内2万店舗体制を築いた「セブン-イレブン」はもちろん、ファミリーマート(1万6000店前後)、ローソン(1万4000店前後)にも遠く及ばない。日販もセブンイレブン(64万6000円、22年2月期実績)、ローソン(49万8000円、同)に水をあけられている。体力的にはミニストップは間違いなく不利だ。

 とくに店内調理に関しては、コンビニだけでなく食品スーパーも注力しているほか、外食産業もテイクアウトを強化している。しかもコンビニ事業は、同じイオングループのまいばすけっと(神奈川県)とも一部競合する。まいばすけっとは同グループが大都市圏を中心に展開する小型スーパーで、大手コンビニからも「コンビニキラー」として怖れられている。

 まいばすけっとの台頭で、グループ内でのミニストップの存在感はますます薄くなる。イオングループのコンビニ事業として、ミニストップは大きな岐路に立たされている。

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