アパレル、家電、雑貨などのリユースショップ「セカンドストリート」を展開するセカンドストリート(愛知県/今泉有道CEO)。全国に700店舗あまりを展開し、年間60~70店舗のペースで拡大を続けている。その追い風となっているのが、長引くコロナ禍でのリユース需要の高まりだ。特に若者の間では「セカスト」の愛称で親しまれ、リユースが消費行動の選択肢として定着しつつある。コロナ禍を経て、リユースをめぐる人々の消費マインドはどう変化したのか。代表取締役社長の今泉有道氏に聞いた。
身近な郊外店舗がファミリー層の新規ニーズを開拓
セカンドストリートをはじめ、ラグジュアリーブランドや宝飾品を扱う「おお蔵」、オフプライスストアの「ラックラック」など、二次流通マーケットにおいて存在感を示すゲオホールディングス。2022年第3四半期(10~12月)における同グループのリユース系事業の売上高は約810億円で、前年同期(約560億円)から144%と大きく伸長。2019年第3四半期(約390億円)と比較すると倍以上の増加と、このコロナ禍にあって大きな成長曲線を描いている。
同グループの成長を牽引するセカンドストリートの店舗数は、全国に753店舗(2021年12月現在、FC含む)。このコロナ禍にあって、年間60~70店舗の出店ペースを崩しておらず、800店舗を視界にとらえている。
また、EC事業もコロナ禍を受け好調で、出品アイテム数は実に約120万点に上る。若者に人気のファッションブランドから高級バッグ・腕時計、アウトドア用品、食器まで「これもリユース?」と目を見張るようなアイテムが並ぶ。
それでも、セカンドストリートにおけるEC化率は15%程度。今もなお、経営戦略の主軸はリアル店舗だ。その理由を、「郊外の総合店舗が、主にファミリー層の新規需要を掘り起こした」と代表取締役社長の今泉有道氏は語る。
「コロナ禍を機に、自宅にいる時間が長くなったことで、家の中の不要なものを見直し、整理する動きが、ファミリー層を中心に増えた。自宅の近くに店舗があれば、不要品をまとめて段ボールに入れ、車に積んですぐに持っていける。そうして、身近な生活圏の中にあるリアル店舗が、リユース需要の受け皿になっている」(同)
700店舗を超えるセカンドストリートの店舗の約7割はアパレル、家電、家具などをトータルに扱う総合店舗。その多くは主に郊外の幹線道路沿いに立地し、都心に比べて人混みを避けられ、かつ車で来店できるので感染リスクが低い。結果としてコロナ禍の影響を受けにくいこともプラスにはたらき、主に30~40代のファミリー層の新規ニーズ開拓につながっているのだ。
“セカスト”が若者の間で定着 フリマアプリとも共存
もう一つ、今泉氏が好調の要因として挙げるのが、リユースをめぐる消費マインドの変化だ。
「数年前からのSDGs(持続可能な開発目標)のトレンドもあり、ものを大事にし、賢く消費する意識が高まったと感じる。特に若い世代を中心に、リユースに対して抵抗感を持たない人が増えている」(同)
InstagramやYouTube上では“セカスト”の愛称とともに、セカンドストリートで購入したファッションアイテムを紹介する投稿が広くシェアされている。「掘出し物のアイテムを見つける」「高額アイテムをリーズナブルに手に入れる」手段として、若者の間ではリユースがクールな消費行動として定着しつつあるのだ。
リユースといえば、フリマアプリなどの個人間取引(CtoC)市場も、このコロナ禍で大きく拡大した。この動きを今泉氏はどうみているのか。
「フリマアプリが登場した当初は、リユース市場における競合として意識していた。しかし、結果として当社のビジネスに大きな影響はなく、むしろフリマアプリが若者を中心にリユースの裾野を広げてくれた」(同)
フリマアプリには売り手が自ら価格設定し販売できるメリットはあるが、写真撮影や梱包など出品には手間がかかる。その点、セカンドストリートのようなリアル店舗なら、アイテムを箱に詰めてそのまま持参し、その場で買い取ってもらえる利便性がある。双方にメリット・デメリットがあり、消費者がうまく使い分けている、というのが今泉氏の見立てだ。
「中古=汚い、うさんくさい」のイメージ払しょくに努める
セカンドストリートの歴史は古く、1996年に香川県高松市で第一号店が開業。家電・雑貨のリサイクルショップからスタートし、そこからアパレルへとカテゴリーを広げながら全国に店舗展開していった。
「創業した約30年前は、リサイクルショップという業態がまだ根づいていなかった。店内の内装も暗く、『中古=汚い、うさんくさい』というネガティブなイメージを持たれていた」(今泉氏)
そのネガティブなイメージを払しょくするため、内装は白を基調として清潔感を持たせ、商品をより明るく、魅力的に見せる店舗設計を心がけてきた。そこにSDGsなどの追い風が吹き、リユースがポジティブな消費カルチャーとして世間に広まっていった。
また、リユースといえばこれまでは「中古=安い」が唯一の価値といってよかったが、今日では「3年前のあのモデル」「レトロなあのブランド」など希少アイテムが手に入るという、リユースならではの新たな体験価値が生まれている。
「たとえば若者の間では、90年代のストリートブランドが逆に新しく、かっこいいアイテムとして再評価されている。そういう一点ものを求めるニーズも高まっている」(同)
専門店化を進め、さらにリユース市場を牽引
それでも、「リユース体験をしたことのある人はまだまだ少ない」と、今泉氏は市場開拓のさらなるフロンティアを見すえる。
今後も年間60~70店舗の出店ペースを継続していく中で、注力しようとしているのが専門店のカテゴリーを増やすことだ。
「今後も郊外型の総合店舗が出店の基本軸となるが、一方でリユース需要を喚起するために『商材の専門店化』を進めていきたい。現行でもホビー、楽器、アウトドアなどの専門店はあるが、もっと他のカテゴリーでも専門店のフォーマットを増やせる余地はあると考えている」(今泉氏)
2019年には、ラグジュアリーブランドを取り扱う「おお蔵」が同じゲオホールディングス傘下に加わった。リユース市場の中で、グループ全体で全方位にポジションを拡大しつつある。
「リユースの買い取り体験、購入・利用体験をもっと人々の身近な選択肢にして、ライフスタイルのひとつと言えるくらいにしていきたい」(同)
ある業界紙の市場調査では、2025年には3.5兆円規模に達するとの観測もあるなど、高いポテンシャルを秘めたリユース市場。「中古=汚い、ダサい」から、SDGsやコロナ禍を経てクールな消費体験へとイメージを刷新した、その市場の牽引役を “セカスト”がこれからも担っていくことだろう。