アマゾンの顧客リーチ拡大(オムニチャネル)戦略(2)
昨日の続きです。
アマゾン ジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長:以下、アマゾン)の顧客リーチ拡大戦略の一端を担っているものに【品揃え】がある。
旧聞の類に入るかもしれないが、米国ではアマゾン・フレッシュの取組を本格化させている。ネットで生鮮食品を購入する慣習がない米国で2007年にスタートした挑戦的サービス。シアトルを皮切りに、2013年には、6月にロサンゼルス、12月にサンフランシスコ、そして2014年7月にサンディエゴ、10月にブルックリン区などニューヨーク州の特定地域で利用できるようになった。
消費者は、青果、精肉、鮮魚の生鮮3品のほか日用消耗品やペット関連商品、売れ筋の書籍や文具用品、おもちゃなど50万点の中から商品を発注。アマゾンが自社トラックで当日もしくは翌日届けるサービスだ。
「地球上でもっとも豊富な品揃え」を謳うアマゾンの【品揃え】への執念は尽きない。
日本では、私が編集長を務める『チェーンストアエイジ』誌のバックナンバーも含め、すでに1億アイテムを扱っている。
さて、今年からアマゾンが中古車販売をスタートさせていることはご存じだろうか?
出品しているのはネクステージ(愛知県/広田靖治社長)だ。
ただし、天下のアマゾンをもってしても中古車のネット販売は一筋縄ではいかなかったそうだ。中古車の価格は不透明で、その後の費用もいくらかかるのか不明。登録の問題もあり、消費者はどうしても疑心暗鬼になり、後ずさりしてしまうからだ。
そこでアマゾンは、まず価格を「33万円」「44万円」「55万円」の3つに絞った。
すべての消耗品は新品に交換。価格には全諸費用を含み、日本全国に配送する。しかも、通常のアマゾンの商品と同じように中古車も返品が可能だ。
これによって、消費者の中古車をネットで購入するという心理的な障害を取り払った。
その結果、中古車販売は軌道に乗り、しっかりと実績を残している。
アマゾンは「地球上でもっとも豊富な品揃え」をモットーに掲げているが、こうしたキャッチフレーズはややもすると画餅となりがちだ。
ところが同社は本当に何でも品揃えし、販売してしまう。
物販小売業が開発したプライベートブランド(PB)商品しかり、クラウドサービスもしかりだ。「ラーメンからミサイル」までは、日本の総合商社の比喩に使われたコピーだが、アマゾンも同じ領域に入ったと言えるだろう。
(明日に続く)
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