オムニチャネル時代だからこそリアル店舗が重要になる
米アマゾン・ドット・コム(以下、アマゾン)は、「アマゾンロッカー」の設置を急いでいる。
「アマゾンロッカー」は、商品引き渡し用の専用ロッカーで、コンビニエンスストアや食品スーパー、専門店などと契約して、アマゾンが店舗の片隅に設置するものだ。
宅配業者の配達時間と折り合いがつかない人にとっては、自宅に最も近い店舗で荷物を受け取ることができるようになるので大変便利なサービスだ。利用方法は簡単で消費者は発注時に付与される6ケタのセキュリティコードを指定の店舗に行って打ち込むだけ。最近では、商品の返品も可能になっているという。
米セブン‐イレブンには、現在、約120店舗に「アマゾンロッカー」が導入されている。
アマゾンが、セブン‐イレブンに家賃を収め、ロッカーを置かせてもらう形をとる。
1週間1店舗の取扱個数は約60個。1日当たりは8個というところだ。
リアル店舗を持たないアマゾンに利があるのはもちろん。セブン‐イレブンのメリットは、家賃収入だけではなく、客単価のアップにつながっているのだという。
日本オラクル流通・サービス営業統括本部の大島誠さんによれば、通常のセブン‐イレブンの平均客単価は約5ドル。しかし、「アマゾンロッカー」の利用者では10ドル20セントと一気に2倍以上に跳ね上がるそうだ。
このビジネスをマネて、同じようなロッカービジネスをスタートさせたのは、カナダの「バッファーボックス」である。「アマゾンロッカー」との違いは、アマゾン以外で注文した商品でも受け取ることができることだ。
大島さんは、こうした状況を鑑みるにつけ、「アマゾンが隆盛になればなるほど、リアル店舗の重要性が再認識されることになるだろう」と予測している。
同じように、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/村田紀敏社長)の鈴木敏文会長も『日経ビジネス』誌(2013年12月23日号)のインタビューに答えて、「米国のセブン‐イレブンには米アマゾン・ドット・コムが、宅配ボックスの『アマゾンロッカー』を置かせてほしいと言ってきている。ネットで強力な力を持つアマゾンでさえ、最終的にはリアルの力を必要とする。彼らもそれがなくて困っているのだろう」とリアル店舗の網の目を細かくしていく重要性を改めて唱えている。
その一方、文具専門店チェーンのステープルズや家電専門店チェーンのラジオシャックなど、「親和性が低い」という理由から「アマゾンロッカー」を撤去する事例も出てきた。
しかしながら、オムニチャネル・リテーリングが浸透すればするほど、重要になっていくのは、リアル店舗であるという事実は揺るがないだろう。
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