かもめ扇風機
ほとんどの日本の製造業は、国際競争においても優位性を発揮するに足る技術力を有している。製造業各社は各様に自社製品が拠り所とする類まれな技術を兼ね備えているものだ。
ただ、今日のように、変化の激しい市場では1社のみの技術力だけでは、競争優位に立てないかもしれない――。
そんな視点に立ち、さまざまな技術と技術を掛け合わせて、新製品の開発にあたっているのが、ドウシシャ(大阪府/野村正治社長)だ。
たとえば、電気料金値上げによって、今夏も大きな需要が期待できる扇風機である。
この夏は、「省力」でかつ「静音」のDC(直流)モーターを取り入れた製品が大ブレークしそうな予感だが、もはや、この技術だけでは同業他社との差別化は図れない。
そこでドウシシャが門戸を叩いたのは、船舶用プロペラでは世界のトップシェアを持つナカシマプロペラ(岡山県/中島基善社長)だ。
ナカシマプロペラの技術力を発揮する形で開発されたのは、カモメの羽根からヒントを得た〈kamomefan〉(カモメファン)。
ドウシシャは、新製品に7枚の羽根とDCモーター(ミネベアモータ〈長野県/赤津浩之社長〉製)を搭載して、「かもめ扇風機」と名づけた。柔らかながらも乱れのない静かな直進性の高い風をしっかりと送り出すことが大きな特徴だ。
いまや扇風機は中国直輸入の製品が市場に横溢し、単機能製品は低価格競争から免れない。
だが、DCモーターの「省力」「静音」に加え、新技術〈kamomefan〉を付加することでそこからの脱却を図り、「かもめ扇風機」は1万9800円(税込)という高い価格ながら、2012年の発売以来、通信販売などを通じて、好調に推移している。
このように製造業1社の中では、思いつかない製品も数社の技術を融合すれば、思わぬヒット製品になることもある。「三人寄れば文殊の知恵」とはよく言ったものだ。
ドウシシャは、扇風機以外にも「技術×技術」の製品を今夏も続々と発売するというから、その動きにはとくに注目したい。
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