いまここにある孤立死問題
東京都立川市で続けざまに孤立死が発覚した。
俄然、地方自治体としての立川市のあり方に注目が集まったが、これはどの市町村にも起こり得る問題であり、立川市に特に大きな不備があったとは思えない。
たとえば、立川市内には、通称「大山団地」として全国的にも有名な「都営・土砂町1丁目アパート」がある。入居世帯数は約1200、入居者数は約3000人の大所帯。日本一の自治会と言われる「大山自治会」(佐藤良子会長)の加盟率は100%。2004年以降、孤立死発生はゼロだ。
「大山自治会」では、自治会事務所と相談窓口を設置し、日頃から住民の相談を受けられる体制を整備している。時間外でも、自治会長の携帯電話を24時間開放して、住民からの緊急な相談や連絡がとれるようにしてある。
また、自治会活動の広報誌(年12回)を発行、居住外国人のために自治会の取り組みや安全対策を記載した外国語のパンフレットも作成している。
さらに、緊急時に備えて、住民の情報を収集・登録し、民生委員や高齢福祉課、社会福祉協議会、包括支援センターと連携している。
イオン(千葉県/岡田元也社長)グループのカジタク(東京都/澁谷祐一社長)のような家事代行サービスの提供も行う。電球の交換、買物、掃除、ゴミ出しなどのメニューが有料で用意されており、人材バンクやボランテイアを派遣することでサービス提供に努めている。
「大山自治会」の取り組みを見ると、無縁社会や孤立死の問題は自治体に任せ、責任を押し付ける一方ではまったくダメであり、自らも傍観者としての姿勢を改め、当事者としてかかわらないことには解決できないことが分かる。
「大山自治会」のように自治会を結成するという方法もあるだろうし、新聞配達所、ガス・水道検針、食品スーパーやコンビニエンスストアなどの小売業が自治体との緊急情報ネットワークを構築するという方法もあり、やり方は多様だ。
いずれにしても、いまここにある孤立死の問題に各人、各組織がいかに対応し、解決するかを考え、動き始める時期に来ていることは間違いない。
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