映画でも必要なトレードオフ発想
映画『アバター』(ジェームス・キャメロン監督)を劇場で観た時には、3D(three dimensions=3次元)効果に衝撃を受けた。手を伸ばせば届きそうな3Dの新しい世界に映画の新しい可能性を感じ、作品の出来栄えとは関係なく感激したものだ。
それから2年――。
先日、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』を観てきた。
原作は西岸良平さんの漫画『三丁目の夕日』(『ビッグコミックオリジナル』連載)。『ALWAYS 三丁目の夕日』(2005年)、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(2007年)の3部作完結編でオリンピックが開かれた1964年(昭和39年)の東京を舞台に物語が展開されていく。
『ビッグダディ』(テレビ朝日)のように中毒性があるようで、ついついはまって観てしまうところはある。
寅さん映画よろしくレギュラーメンバーによる人情物語で中身については実際に観て評価してもらえばいい。
問題は3Dである。
私が観たのは3Dで上映されていたもの。ただ、冒頭のタイトルバックに出てくる東京タワーを上から眺めた映像には見どころがあるものの、この作品をわざわざ3Dで撮る必要はなかったのでは、というのが正直な感想だ。
大体、寅さんのような人情物語である。獰猛な獣や怪物、空からの円盤や宇宙人、恐ろしいほど美しいほどの自然の映像があるわけではなく、1964年の東京の状況が淡々と流されるだけである。
それを3Dで撮ることに無理がある。
2D(=平面)での上映もあるので、私のような人間は最初からそちらに回ればいいかもしれないけれども、2種類が上映されているなら、何かありそうな3Dを観たくなるのが人情というものだ。
鑑賞料は2000円と通常よりも200円高いのだから、3Dにするならば、観客が納得のいく作品にしてほしいところだ。
技術的に3Dが可能だからという理由で何でもかんでも3Dで撮るというのは、顧客志向とは言えず、せっかくの良い映画も結果として映画離れに拍車をかけることにつながる。
こういう時にこそ必要なのがトレードオフの発想なのだろう。
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