技術輸出という手もあるPART2
オール日本スーパーマーケット協会(大阪府/荒井伸也会長:AJS)は、加盟小売企業同士が情報交換して切磋琢磨する「知恵の共同仕入れ」集団。2011 年7月現在、会員企業数58社、総店舗数1157店舗、総売上高1兆5923億円、と食品スーパーマーケット(SM)業界では独特の地位を築いている。
そのAJSに台湾の全聯實業股份有限公司(ぜんれんじつぎょうこぶんゆうげんこうし:台北市/林敏雄董事長)が入会することになった。11月22日に開催されたAJS役員会で承認されたもので、AJSへの海外企業加盟は初となる。
全聯實業股份有限公司の前身は、台湾政府の「全国公務員教師福利聯合会」。台湾の公務員、教職員に対して商品を一般小売店より安い価格で販売する官営小売店舗だった。
1998年に、その既存66店舗の経営を林敏雄氏が引き継ぐ。
林氏は、赤字経営だった同社を建て直し、現在、台湾全土に599店舗を展開するまでに育て上げてきた。2010年度の売上高は574 億台湾元(約1480億円)だ。
同社は、「伝統的な市場(いちば)で生鮮食品を購入するのが当たり前の台湾でも、その販売の中心的役割はSMにシフトする。だから生鮮商品を強化してい くことが必要」という考えからAJSの生鮮食品管理のノウハウや「知恵の共同仕入れ」に関心を持ち、加盟を希望していた。
今回は、その熱意が受け入れられ、承認された格好だ。
さて、周知のように、少子高齢化によって、日本国内市場は縮小の一途を辿っており、海外進出に乗り出す小売企業は少なくない。
しかし、全聯實業股份有限公司のAJS加盟は、それだけではなく、日本がこれまで培ってきたSMの生鮮食品管理技術には、海外SM企業の需要があることを教えてくれる。
台湾のみならず、中国、インド、アメリカ、ヨーロッパ…とくに水産部門の鮮度管理技術を中心に売り込める可能性は大きい。
以前にも、このBLOGで書いているが、日本企業の海外進出は店舗によるものだけでなく、技術輸出という手もあることを改めて証明したと言えるだろう。
類似ブログ http://diamond-rm.net/articles/-/4177
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