ファーストリテイリング中間決算実況中継(2) 5年後には海外売上が国内を超える

2010/04/15 00:00
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 今後のユニクロ事業の成長戦略は、(1)商品力強化、(2)国内都心店の出店加速、(3)グローバル展開の3つを考えている。

 

 まず、(1)商品強化ということでは、「シルキードライ」と「サラファイン」という夏の機能性インナーを大々的に販売して、合計1700万枚(対前年比倍増)の達成を計画している。冬の「ヒートテック」に対して、夏は「シルキードライ」と「サラファイン」をさらに打ち出していく。

 また、「スタイルアップインナー」にも期待する。瞬間的に売り切れてしまった商品だが、日本経済新聞社地域産業研究所の2010年第1四半期新製品ランキングで第1位と評価された。非常に画期的な商品である。

 それと、「ウィメンズ商品の強化」で従来以上に、ワンピース、スカート、ブラウスなど、商品ラインナップの充実を図りたい。

 いまのトレンドは、ナチュラルでルーズフィットだが、格好いいという服。世界中のマストレンドは「リラックス&コンフォート」という方向性にある。FRは、この新しいコンセプトにマッチした商品を世の中に出していきたい。これは、「服をもっとナチュラルに快適に着ていこう」ということ。麻、コットンを主体にジャケット、シャツ、パンツの組み合わせで新しいスタイルを提供していきたい。

 ユニクロのTシャツの「UT」については、4月17日から日本でも公開される映画の『アリス・イン・ワンダーランド』(ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演)に協賛して、Tシャツ、ワンピース、バッグ、スカーフなどを提供する。このようにディズニー社やワーナー・ブラザーズ社という世界の2大キャラクター・コンテンツ・カンパニーとの協業によって世界中にTシャツを販売していく。

 それに加えて、日本の漫画。世界中で1億冊を販売している『ONE PIECE』(ワンピース)や『ドラゴンボール』のような人気コンテンツを集めて販売したい。さらに日本のコンピュータゲームメーカーのコナミさんの『メタルギアソリッド』は欧米で人気があるが、そうしたコンテンツもTシャツに入れて販売していきたい。さらに世界のヒーロー、日本で言えばウルトラマン、仮面ライダー、マジンガーゼット、エヴァンゲリオン、ガンダム…。米国で言えば、スパイダーマンなどを、いまから、このゴールンウイークにかけて、新発売したいと考えている。

「+J」は、第2弾、第3弾を発売する。「あらゆる人が着られるラグジュアリーウエア」をめざす。いままでラグジュアリーウエアは一部の人の着るものと思われていたが、FRが業界の概念を変えたい。コンセプトは「未来を開放」(Open the Future)。シンプルであるがゆえの贅沢さ、デザインにおける純粋さ、美しさと快適さ、あらゆるひとへの高品質。これは、ユニクロにとっては新しい商品であると同時に画期的な試みであり、ユニクロのブランドイメージが大きく変えられると思う。これによって、新しい商品カテゴリーを生み出し、いままでにない業態を生み出す可能性がある。

 

 次に(2)国内都心店の出店加速ということでは、とくに百貨店への出店を強化したい。4月23日に新宿高島屋(東京都)、そごう千葉オーロラモールジュンヌ店(千葉県)、そごう川口店(埼玉県)の3店を同時オープンする。

 都心部では百貨店が今でも“小売りの王様”である。ただし、販売している商品が時代にかなり合わなくなってきた。その意味ではFRとの相乗効果を図りたい。服を買ううえでは、FRと百貨店の組み合わせが最も強いと考えている。

 百貨店のダウン率はこれまで異常だったので、正常な状況までは回復すると考えている。ただし、栄華を極めた過去のようにはならないだろう。新しいノーマルな状況になるはずだ。

 2010年8月期末には大型店舗は対前期比31店舗増の102店舗になる見通しだ。最終的には200店舗の大型店とその周囲に800店舗の標準店舗及びエキナカ、駅周辺に小型店を配置する布陣になる。

 国内ユニクロ事業の2010年3月の既存店舗は対前期比16.4%減だった。不振の原因ははっきりしており、マーケティングに問題があった。

 2009年は、藤原紀香さんを起用してカラーパンツを訴求し、カラーパーカーをキャンペーン的に販売した。また、東京ガールズコレクション(TGC)でもジャケットを売った。即座に売上につながる販売促進活動だったが、2010年は「UJ」で「ユニクロのジーンズを刷新した」という抽象的なキャンペーンだった。たぶん、FRが意図したことがお客様に伝わらなかった。何を購入してよいのかがよく分からなかったのではないかと思う。そこに天候不順が追い打ちをかけ、売れるべきものが売れなかったということだと分析している。

 

「UJ」は、FRの思いが伝わっていないのと同時に、誤算だったのは、価格帯が1990円、2990円、3990円と3つあり、複雑になってしまった。修正しなければいけない点だ。しかし、商品の出来栄えは、非常に良いので、「UJ」が浸透すれば、かなり期待できると思う。価格態の修正については、絞り込むということ以外、いまは言えない。

 4月、5月に関しては、それを取り返そうということで、巻き返しを図っていく。2010年は、売上を獲得できそうな商品が満載なので4月、5月は大丈夫だと期待している。なお、下期の既存店舗伸長率目標は対前期比ゼロにしている。3月の16.4%減を織り込んだ数字だ。

 

 3つめの(3)グローバル展開については急成長している。2010年8月期は売上高が倍増、営業利益は4倍以上になる見込み。欧米では旗艦店の売上増大で収益が急速に改善され、すべての出店国で黒字化を実現した。5年後には海外の事業規模が日本を超えるはずだ。

 海外における今後の成長戦略は、まず、アジア市場は「最大の成長機会」と位置付けている。そしてアジア各国で「圧倒的なナンバーワン」になりたい。中国、韓国では店舗網を積極的に拡大する。

 2010年5月15日には、上海にグローバル旗艦店を開業する計画だ。一番の繁華街である南京西路に出店するもので売場面積は1100坪と世界最大。世界のアップルストアをデザインしたBohlin Cywinski Jackson(BCJ)が設計した。上海万博が開かれ、たぶん1億人以上の来訪者があるはず。その方たちの来店を期待しながら、上海旗艦店を起爆剤に中国市場で拡大したい。

 さらに、この秋には台湾の台北に出店。マレーシアのクアラルンプルにも出店する。その後も、東南アジア各地に出店を加速させる。

 欧米では主要都市に旗艦店・大型店を続々と出店する。ニューヨーク、パリでは複数店を開業。その他、欧米主要都市でも出店をスピードアップする。

 グローバル旗艦店の戦略については、世界中の最高の立地に最高の店舗をつくっていきたい。2006年にソーホー ニューヨーク店を出店。2007年、ロンドン 311オックスフォードストリート店、2009年、パリ オペラ店…。今後の計画は、5月の上海、秋には大阪心斎橋に日本最大のグローバル旗艦店、2011年秋に銀座地区にグローバル旗艦店をオープンさせる。さらには、北京、香港、欧米主要都市でグローバル旗艦店の出店を目指す。

 パリの好調の要因を分析すると、パリっ子はファッションには敏感だがケチという特性を持つ。無駄なお金は使わない。そのなかで、FRは高品質で低価格の商品を提供している。世界中でもFRの品質を提供している企業はない。そこが評価されたと思う。

 もうひとつは、「おしゃれ」ということは個性的な服を着ていることではないと考える。服の着こなしが個性的という意味であり、そのパーツとしてはベーシック。FRの服の方がより個性を発揮できると思う。

 だから、進出国によって、商品を変えるということはまったく考えていない。服というのは服装の部品であり、服の組み合わせによって個性が決まると考えており、組み合わせを変えてもらえばどの国でも対応できると思うからだ。

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