アメリカ流、氷屋⇔炭屋の商売
夏は「氷屋」で、冬は「炭屋」に転身――。
昭和40年代後半くらいまでは、日本の多くの街に、こんな生業店があった。需要の大きな繁忙期のみに営業するという一種のアイデア商売だ。だが、冷蔵庫やエアコンディショナーなどの電化製品の発達と普及とともに、だんだん、姿を消して行き、いまではほとんど見かけなくなっている。
ところが2010年を目前に控えた今日、アメリカで似たようなコンセプトの商売が台頭している。
主役を演じるのは玩具小売最大手のトイザらスだ。
今年の10月初旬から1月中旬のハロウイーンやクリスマスシーズンの繁忙期中のみ、ショッピングセンター(SC)内や「ベビーザらス」の店舗内など約260カ所に臨時店舗を開設している。
これまで年末商戦では、巨人ウォルマートの臨時増設“玩具”売場やインターネット販売の前に辛酸をなめ続けてきた同社の巻き返し戦略である。
トイザらスは、世界的大不況を背景にテナントが歯抜け状態になっているSCが星の数ほどあることに目を付けた。これなら自社に都合の良い立地ばかりを選べる。
臨時店舗は、テナント貸主である商業デベロッパーにとってもメリットが大きい。テナントスペースを長期間にわたって空のままにして遊ばせているよりもいいし、なんと言ってもSC全体の競争力を上げることができる。
SCのテナントスペースに空きが目立つようになっている状況は、日本でも同じだ。ということは、日本でも期間限定の臨時店舗を商売の繁忙時に合わせて開業することができるようになるものと予想できる。
もはや「氷屋」「炭屋」の臨時店舗を開設する者はいないだろうが、バレンタインデー商戦のチョコレート売場よろしく、シーズン性の高い商品を扱っている経営者は、検討してみたい。
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