記者は敏感じゃなければならないんだけれども…

2011/08/26 08:55
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 「記者というのは敏感でなければならない」と教えられてきた。

 

 時代は1989年――。

 秀和(2005年私的整理)が忠実屋(消滅)といなげや(東京都/遠藤正敏社長)の株式を大量に取得し、両社に対して合併を迫るという出来事があった。

 しかし翌90年に金利が急激に上昇、不動産業への銀行の融資規制、米国不動産不況などが重なり、秀和の資金繰りは急速に悪化する。

 

 そこで、この株式を担保に融資をした流通企業があると噂が流れた。

 流通業界内は騒然。融資した再編の主役は、ダイエーかセゾングループかイトーヨーカ堂か、はたまたジャスコか、というスクープ合戦になった。

 

 そんななか記者陣に囲まれた秀和の小林茂秀社長(当時)が、タマゴを使ったたとえ話をした。

 すぐさま「バックにいるのはダイエー中内だ!」とひらめいた記者がいた。

 当時の中内功さんは、何かにつけタマゴを使った話をしていたからだ。

 はたして、その記者の予想通り、90年12月7日に忠実屋株2800万株を担保に700億円を融資していることを発表したのはダイエーだった――。

 

 この故事を引き合いに出されながら、ある事柄に敏感に反応して推測することは記者にとっては大事な資質である、と駆け出しの頃から教えられてきた。

 

 しかしながら、なかなかそううまくはいかないもので…。

 時は2009年7月6日。

 コストコホールセール・ジャパン(以下、コストコ:神奈川県/ケン・テリオ社長)が新三郷店(埼玉県)を出店するに際して、取引先・記者を集めた内覧会を開いた。

 会場でばったりとお会いしたのは、ベイシア(群馬県/赤石好弘社長)の高山正雄(前)社長だ。

 「今日は何ですか?」と尋ねると、「勉強のために取引先に頼んで参加させてもらっているんだ」と答え、立ち話を10分ほどした。何の疑問も持たず、「取引先に頼めば、ライバル企業でも内覧会に入れるものなんだ」と感心して別れた。

 

 それから約1年後の2010年9月。ベイシアがデベロッパーのショッピングセンター「パワーモール前橋みなみ」(群馬県)の第2期オープンの目玉としてコストコが出店することが公になった。「ああ、あの時、高山さんは、出店誘致のつながりで来ていたのか」と愚鈍な自分を責めたけれども、時が戻ることはない。

 

 そして本日、「パワーモール前橋みなみ」内に、コストコの10番目の店舗が開業する。

 

 もう少し敏感であれば、「コストコ、ベイシアのショッピングセンター内に出店」というスクープを取り逃がさずにすんだものの、後の祭りとはこのことである。

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