人気のパ、実力のパ
「人気のセ、実力のパ」。
プロ野球の世界では、私が子供の頃から言われていた。
とくにセントラル・リーグとパシフィック・リーグの対抗戦であるオールスターゲームでのパ・リーグの強さは目を見張るものがあった。
しかし数字を見れば、2011年度の段階でパ・リーグが77勝71敗9分と勝ち越しているものの、戦績は拮抗しており「実力の――」と言い放てるほどの強さではない。
では、日本シリーズはどうか?
2010年度までの実績を振り返ると、セ・リーグが34勝、パ・リーグの27勝。こちらも「実力のパ」とは言い難い。
そう考えると、「実力のパ」という言葉がそんなには当てにならないことが分かる。
それでは、人気の方はどうか?
ホームゲームでの観客動員数を見ると、2009年度のセ・リーグ1269万2228人に対してパ・リーグは970万7451人。2010年度は、セ・リーグの1230万8022人に対してパ・リーグは983万2981人と年々確実にその差は縮まっているが、以前として「人気のセ」であることは変わりない。
大阪、東京、名古屋の大都市を本拠地にする3球団の集客パワーによるところが大きく、阪神タイガースが300万人超で12球団トップ。東京読売ジャイアンツが300万人弱、中日ドラゴンズが220万人を集めている。
パ・リーグでは、トップの福岡ソフトバンクホークスが中日と同レベル、北海道日本ハムファイターズが200万人弱というところだ。
目に着くのは“球界の盟主”と言われた巨人の凋落ぶりだ。
2002年度の378万3500人をピークに年々減少の一途を辿っている。実数発表を開始した2005年度以降は300万人を切り、以降、300万人を超えたことは一度もない。
一方でパ・リーグのチームの人気は急浮上している。とくに地方都市でのパ・リーグ人気は凄まじく、「九州」のソフトバンク、「北海道」の日本ハム、「東北地方」の東北楽天ゴールデンイーグルス、「千葉県」の千葉ロッテマリーンズという具合に地元の人たちが地元の球団を一生懸命応援している。
それまでは、本拠地球団が不在のエリアは、大抵、巨人の牙城だった。しかし、人気に胡坐をかき、大枚を投じて他球団の有力選手を獲得し、プロパーでの選手育成を怠っているうちに、巨人の観客動員数はどんどん減り、パ・リーグのチームに移っているものと推測できる。驕れる人も久しからず、だ。
しかも、パ・リーグには、ダルビッシュ有、武田勝、斉藤佑樹、中田翔、(以上、日ハム)、田中将大(楽天)、杉内俊哉、和田毅(ソフトバンク)、成瀬善久、唐川侑己(ロッテ)、涌井秀章、中村剛也(以上、西武)など日本を代表する人気実力を併せ持つ選手がゴロゴロいる。
スター育成にも努力しており、日ハムでは打率2割6分5厘(第18位)の中田翔を4番打者に起用し続けている。
とはいえ、いまのところは過去の遺産で「人気のセ、実力は伯仲」の状態がまだ続いていることも事実。しかし早晩、「人気のパ、実力のパ」にシフトしていきそうな気がする。
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